さみfulldays♪

さみ日常雑感食べたものの話

※青桃メタ(内縁ネタ

 めっちゃひとえらぶ

(というか読む側で得する人がいるきがしない)

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「メタリア」
ある日、兄さんがぼくを呼んだ。
「急ぐ必要はない。時間が空いたら、私の所へ来てくれ」
今からの新兵の訓練が終わったら、時間が開くな。
ぼくはその旨と、後で兄さんの執務室に行くことを伝えた。

言われた通りに行くと、兄上は来たか、といい執務用の大振りなデスクから立ちあがった。
デスクからだいぶ離れた部屋の真ん中あたりにホルターに着せた白いドレスが飾ってあった。いわゆる、ウエディングドレスだ。
これをぼくに見せたかったのかな?
でも、なぜ?

兄上は横を向き、ドレスを着せてあるホルターから少し離れた位置に立っていた。そしてぼくの方を向いて、言った。
「今から、私の為にそれを着てくれないか」

ぼくは自分でわかるくらい、ハトがマメでっぽうを喰らった顔になった。それを見て、兄上は少し自信なさげに言った。

「無理にとは言わない」

なぜ兄上が、花嫁さんに着せるドレスをぼくに着せたがるのかはわからないけど、兄上がぼくがこのドレスを着ているのを見たいと言うなら、特に断る理由もなかった。
実を言うと、一度着てみたかったのも、正直な気持ちだった。
スージーのウエディングドレス姿は、ほんとうにキレイだったから。
作った自分がいうのもなんだけど、スージーのなだらかな躰の線を引き立てる、ほんとうにキレイで、美しい花嫁さんだった。
ぼくもあんな風になれるのかなあ?
ぼくは当時、そう思ったものだ。

それから、いろいろとおかしくなった。
まずスージーが、突然兄さんとの婚約を解消(結果的には話し合いの末だけど、それがなければ実質「破棄」)した。
残された兄さんはスージーの幸せをねがい、優しく見送ったけど、情緒不安定になった。
兄さんはその後、修行の旅に出て、その間にポップスターに異変が起きてぷにぷにちゃんも行方不明になり、結局、ぼくも兄さんと星一周マラソンをすることになった。
異変は解決して、兄さんは修行の旅を再開したけど、ぼくも兄さんが星を回り終わるまでなんとなく兄さんの後を追って、一緒に行くことにした。
心配というよりは、事件解決の旅も済んで、このまま一度別れるのも寂しいので、単に家に着くまではこのまま一緒にいたかっただけだけなのかもしれなかった。
その間に、ぼくたちはある夜成り行きで、互いに傷ついた状態を癒そうと、トマトをくちうつしで食べたことがきっかけで、そのまま……(兄さんは、「ヒーリング」を使いたがらなかった。「修行」のためだろうか)いわゆる、「できちゃった」状態になってしまい、その後も旅の間何度も「成り行き」を繰り返した結果、ぼくは本当に兄さんの子供を孕んでしまった。
どのみち、兄さんの跡取りは必要なので、それは形の上では解決した……のだけど。
それからのぼくは、スージーの代わりになった。兄さんの人に見せられない、脆い部分を受け止め、時に癒す、ぼくはそういう役目になった。
ぼくは兄さんの事が好きだけど、スージーと兄さんの間柄みたいに、「熱愛」したいわけでもないし、「成り行き」なのだから、このまるっこい体が兄さんの役に立つなら、それでもいいのかな、と考えるようにしていた。
惑星メックアイにいた時に見た、騎士相手の「娼婦」みたいだなあ……って、自嘲した時もあったけど。
そして、ぼくは一つの恋を終わらせた。
兄さんとそっくりで、でも兄さんとはちがう、かわいいあのこ。
今も会う友だちだけど、もう、こっそり家を抜け出して、一緒にお花畑や森で遊ぶことは、しなくなっている。

一人目の息子、アンリを産んでからは、そんなことなど気にしている場合ではなくなった。「お母さん」になったのだから。母親の役目と、幹部の役目をこなしながら、二人目の娘アンナも生まれ、それからはその繰り返しだ。それに不満はない、どころか今はとても幸せだ。
ふたりの子供たちはかわいいし、みんなとも上手くやっている。新兵の教育という役目を与えられてからは、苦闘しながらもぼくはとても満たされている。
でも、兄さんとはこれまで通り兄と妹だ。兄さんの子供を生んだとはいえ、ぼくは「その役割だった」のであって、決して「お嫁さん」ではない。それは兄さんもそう考えているだろう。兄さんが真剣に恋をしたのは、スージーだけだった。

でも、ぼくにはドレスを着るのに、どこか納得していた。昨晩のことだった。
いつものように兄さんの寝室にいた時だ。ふと兄さんが言った。
「お前も、この年なら、私があんな事にならなければ」
「今頃は何処かに嫁いでいたのかもしれないな」
潤んだ金色の眼の光。哀しそうな顔だった。
ぼくは笑った。そんなことはどうでもいいから。
「そんなこと、今まで考えたこともなかったです。子供たちもいて、みんなもいて、ぼくは、とても幸せだから」
「いや」兄さんは首を振った。
「私はお前に甘えて、お前を拘束してしまった。お前の人生を、めちゃくちゃにしてしまった」
兄さんはぼくの肩口に顔を埋めた。
そして、肩が熱く濡れた。泣いているのだ。あの、兄さんが。
「許してくれ」
兄さんが押し殺した声で呟いた。体も、羽も、震えている。
ぼくは兄さんが急に愛おしくなって、兄さんの震えを止めるように、優しく抱きしめた。今までにない想いだった。少し、手に力が篭っていたかもしれない。
めちゃくちゃにされたなんて、ぼくはかけらも思っていない。始めは、成り行きだったかもしれない。アンリが生まれたこともその結果だったのかもしれない。でもぼくは、望んでその役目を選んだ。恋をあきらめたことも。兄さんに「そうさせられた」んじゃなくて、ぼくが決めたことなんだ。
でも兄さんは、いままでずっと
独りで苦しんでいたんだ……ぼくの人生を滅茶苦茶にしたのかもしれないって。
兄さんはやっぱり、優しい。
そんな優しさが、脆くて、危うく見えた。そしてそんな弱さを見せてくれるところがとても切なくて……愛しい。

「兄上、むかしも今も」
「ぼくは兄上と共にいます」
ぼくは兄さんの背中を何度も撫でた。
「だから、迷わないでください」
「ぼくは迷ったことなんて、ないんですから」
上手く、伝わったかはわからないけど。
それからはぼくの体に顔をうずめる、兄さんの背中をただ撫で続けた。そしてそうしている間に、ぼくはいつしか、眠ってしまった。

そんなことを思い返しながら白いリボンを頭に付け、ドレスを着て、着替えをしていた書斎の入口から出た。

兄さんはぼくを見ている。そして言った。
「ああ、メタリア」

「なんて美しいんだ」
普段は聞くことのない、熱っぽい声だった。気のせいか、仮面から零れる瞳がいつもより、光輝いているように見えた。
美しい、なんて始めて言われた。
「かわいい」は昔からよく言われたけれど、「美しい」とはスージーの為にある言葉だと思っていた。だからちょっと、信じられなかった。拍子抜けしたというか。

「もっとよく、見せて欲しい」
兄さんがぼくに近づいてきて、透けるレースの手袋をした両手を取った。そして顔をものすごく近づけてくる。
「やぁだ兄上、そんなに近づかれたら、は、恥ずかしいのです!」
ぼくはダイレクトに精悍な仮面の顔が近づくのに顔が真っ赤になってしまい、すこし首をすくめて距離をとった。

「そうだ」
「二人にも、お前のその姿を見てもらいたい」
二人、僕が言ったその声に、
兄上が執務室の入口に顔を向けると、
息子と娘が部屋にいることに気がついた。

「お母さま!」
娘のアンナが無邪気に駆け寄ってくる。ぼくはそんな娘を力いっぱい抱きしめた。

息子のアンリは固まったまま動かない。照れ屋さんなのだ。
「いらっしゃい、アンリ」
アンリに手を差し出し、アンナと同じように来るように促す。彼はきっかけができたことで照れを払拭できたのか、淡々と歩いて近づいてきたので、ぼくは彼も捕まえるようにして抱き込んだ。
「お母さま、きれい、すごくきれい、花嫁さんみたい!」
「ありがとう」
ぼくは嬉しくなって、アンナの額にキスをした。ついでにアンリの仮面から覗いた頬にも。彼はいやそうではなかったけれど、怯んで、首を少しすくめた。
「兄上」
ぼくは二人を抱きしめながら、兄さんの方を見た。
「いや、私は…」
兄さんは頬に手をやりながらすこし横を向いたが、やがて唐突に言った。
「家族の写真を撮ろう。四人で」

「そういえば、結婚式の時以来、写真は撮ってなかったですね」
あの時のドタバタ。それ以来なんとなく、ぼくと兄さんの写真は撮ってなかった。でも、それって、ウエディングドレス姿のぼくも映るってこと?
それじゃあまるで、

僕がそのことを兄さんに言おうとしたその時、いつの間にかメタナイツ(と水平帽子のワドルディ)までが部屋にいることに気がついた。

「彼らにも、見ておいて貰おうと思ってな」
「あのー……」
ついに、ぼくは呆気にとられてしまった。

兄上が笑う。
微笑ましそうに笑うナイトも、やや興奮気味でまくし立てるナイトも、口ぐちにぼくのドレス姿を褒めてくれたので、ぼくは照れながらも彼らに礼を言った。

「はい撮るダスよー、一たす一はー?」
にー!と笑いそうになったところで、
カメラマン役で、彼と仲のいいジャベリンナイトが冷静につっこむ。
「メイスナイト、真面目にやれ」
しかもお前カメラマンじゃないだろう。
まあいいじゃないダスか、盛り上げ役ダス、盛り上げ役〜!
メイスのひょうきんさは時に、雰囲気が沈んだり緊張したときの清涼剤になる。
時に調子に乗ってふざけすぎるのも愛嬌だろう。ぼくも、人のことは言えないし。今は、ガチガチになりそうな雰囲気が和らいでいるし、むしろジャベリンとのコンビでぼくもアンナも(アンリは我慢している)笑わされている。

家族の写真、か。それなら。
昔から苦楽を共にしている彼らもほぼ同じようなものじゃない?
と、ぼくは考えた。そしてカメラマン交代でメタナイツまで入れた写真撮影までどさくさに紛れて始めてしまった。兄さんは呆れていたが、一緒に写真に収まってくれた。

今でも、ぼくは兄さんの「お嫁さん」にはなったのかはわからないけれど、
息子と娘も含めて、四人では今までとは違う「家族」になったのかな、
そう思っている。
兄さんとぼくの部屋には、それぞれちゃんと四人で撮った写真が飾ってある。
兄さんは生真面目な写真で、ぼくはすこしおどけた写真を。
写真は違っても、きっとぼくたちが「家族」なのは、同じだろう。

やっぱり理解できない

 

※私は「他人の感情が読みにくい」「自閉スペクトラム」と診断されています。その「思考型の一例」としてお読みください。全ての自閉スペクトラム症者が同様の思考をするわけではないことにご留意ください。

 

少し前、私は他人に大変辛辣な言葉を吐いた。

「絵のプロになりたい(イラストレーターをイメージしたと思われる)」という(学生さんたちに大してである。

 

申し訳ないのだがお二人ともイラストを拝見すると

どう見ても「他人に購買意欲などを想起させる」という「視覚的に多数の心に訴求する」スキルが必須の「絵のプロ」には程遠い実力であった。「自分が見えていない」のだ。

いわゆるこんな状態。

 

 

その際、

「夢を否定する人は嫌い」だの「人を非難するなんて許せない」だの

めちゃくちゃ叩かれましたが、今でも

私が非難される理由がわからない。

ネガティブな感想や感情を感じて、

「言うか」「言わないか」、それだけの違いである。

「ポジティブな」言葉なら彼らは諸手を挙げて歓迎するのだ。

「言った」場合、大抵は非難を受ける。

自閉スペクトラム症持ちの私はそれを「当たり前」と理解することができない。

 

実際彼らに誰一人「あなたはプロになれる実力です」と励ましたやつなんて見る限りいないのだ。「他人の夢に干渉するな」その一点張りである。

 別に親切心ではない。第三者の視線をありのまま伝えただけである。

(自己愛にまみれ盲目状態の)お二人の自己イメージを壊す言葉には違いないので、

「二度と会いたくない」だの猛烈な拒否反応を受けた。それについては問題はない。

どう感じるかは受け取り手の自由である。

 

その前に私は「今の実力ではプロは難しいのではないか」と率直に意見を言った。

その時も「プロになります!なってみせます!」だの全く聞く耳なし。

 

さらに後日彼らが年下の(プロも舌を巻くレベルの)絵師さんの絵をRTしながら「プロ絵師になる」となおもほざいているのを見て

正直【生きてて恥ずかしいレベル】だと思ったので、それもそのまま「名指しで」言ってしまった。

彼らがどう感じるかは正直「考えてなかった」。

傷つけるとか以前に「正直な感慨」をダイレクトに伝えたい、そのことしか考えてなかった。余波など全くお構い無し(これはADHDの衝動性も関与していると思う)。

 

私が多くの人から非難を受けたのは

「言葉選び」の問題なのだろうか。

「名指し」したことだろうか。

(当該の言葉(下線部)は彼らのフォロワーが拡散したゆえに多くの人に読まれた。私がその言葉を積極的に広げたわけではなく、名指しにより彼らに「恥をかかせた」のだとしたら、彼らに恥をかかせたのは拡散した「彼らのフォロワー」である。)

それとも「思ってても言ってはいけない」ことという、「タブー」に触れたからだろうか。おそらく後者だろう。

「普通の人」にとっては「言わない優しさ」が美徳なのだ。

「可愛らしい夢」と黙って見守るのが美徳なのだ。

心の中や、影で笑い者にしていたとしても、だ。

私にはその方がよほど、「個人的な正義」に反する。

(余談だが後日私が彼らの絵について抱いた感想が正しかったことが証明されてしまった。)

 

先の暴言については、個人的な「良心(エゴ)」を貫いた末の話である。

結局彼らは何も変わらなかった(どころか恨みを募らせるだけだった)ので、ただの徒労ではあったが。

 

結論を言うと、

私はネガティブなことについて「言わない美徳」が理解できないのである。

ゆえにしばしば私と、「良心的な」「一般の人々」と間に軋轢が起こるのだ。

 

一般向け自閉スペクトラム解説書では「自閉スペクトラムは他人の感情よりも「本当」のことを言うことを優先する」と言う要旨の解説がされており、私の行動も他人の感情を想像しづらい「自閉スペクトラムの症状の一種」として出てしまったと言うことなのだろう。

それを暴言行動の免罪符にしたいわけではなく、

 

「自閉スペクトラムも関与した、「一般人」とは異なる価値観を持っているため、私と一般人の間に「争いの種は尽きまじ」と言うことである。

 

この記事を書いた趣旨

「一般人の価値観の否定」や「自閉スペクトラム的社会的問題行動の理解啓発」ではなく、

『私はこんななので、敵を作っても何かを失ってもこんな生き方しかできない、しょうがない』と言う諦観と、決意表明みたいなものです。不利益面を勘案して、変われるならとっくに変わっているでしょう。

そしてそれが「自閉スペクトラムとしての性」なのだと思う。

 

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光の溢れる泉

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その時母もおらず寂しかった彼女はおもむろに鉄の睡蓮に乗ってみた。すると光が溢れ出し、彼女を祝福した。

 



祝福を。他者から軽蔑され、蔑まれるためだけに生きている、惨めに這い蹲る生き方しかできない愚かな私に祝福を。

 

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ギャラクシアのおとめ(ももメタ進化形態)さんです。久しぶりに描きました。

毎年フォロワーからも誕生日総スルーだったんですが今年は数名におめでとうを言ってもらいました。ありがとうございました。

 

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不可解な行動

※懺悔や反省の文ではありません

フォローしてた絵師さんと相互解消となりました。センスもあり、短時間でプロも舌をまくような素敵な絵を出してくる方です。私はその方のワナビー的な行動をしてまして、要するにイラストの技法を1部ぱくってました。

具体的にはメディバンペイントの「丸ペンをにじみ5にしてつかう」ということでしたが(あっ)

あと自分のお絵かきが自分の納得できるようにできず、「簡単に自己実現を達成できるように見える」その方に嫉妬してますwで、当てつけなりして関係をぶっこわすようなことを積極的にしてました。

実は相互だったのはありがたかったけど苦痛でもあった。故に、今後は一月に1度くらい「メディア」を覗けばいい話なので、わたしは相互でなくなった今の方が気が楽になりました。2度とネットでその方にお会いすることはありません。

 

 わたしはそのように、意図的に「縁を損なうような行為」を行うことがあり、

自分のルサンチマンをコントロールできない「苦痛」から逃れたかったのかも知れません。

もっといえばそれが「私の望み」だったのかもしれない。

自分への怒りを他人にぶつけ(八つ当たり)なくてすむ。

 

あと今日は私の誕生日でした。

ケーキを買ってもらいました。

今は子供の時と違い、ある程度物欲については叶うところもあり、お祝いしてもらいたいとか望むこともなく、強いていえばあのかわいいがま口ポシェットほしいな!くらいかな……バッグはもういらん!我慢だ。

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「meal/機械仕掛けの少年騎士」



今のメタナイト軍団の首領、メルヴィン・メタナイト・ブラウ・ハルバードが幼かった時の、昔の話である。

メルヴィンは小さな時から、機械に親しむのが好きだった。

剣を持つのと同じ、あるいはそれ以上の時間彼はスパナや工具を持ち、自分の時間にはいつも機械職人が集う工場(こうば)にいた。初めは興味津々に見ていただけだったが、
そのうち工具を手渡したり目の代わりをしたりと職人の手伝いをするようになり、
やがて共に工具を握るようになった。
職人たちは、彼を「小さなメカニック」「機械仕掛けの騎士」と呼び、親しんだ。
時折親しげに頭を撫でてくれる職人たちは彼にとって、機械と同じくらい大切な友達だった。
上からの通達で、定時になれば彼を工場から返すよう徹底されていたものの、
問題は彼が自室で、機械いじりをしている時だった。

「メルヴィン様、お食事の時間です」
何時もの通り、アックスナイトが彼を呼びに来た。
「今は忙しい」
メルヴィンはばらしているミニ・ヘビーロブスターから目を上げず応える。
「いけません。お食事の時間です。食事はとらなくてはならないものです。そして騎士たるもの、規律正しい生活をしなくてはなりません」
「うるさいな!」
メルヴィンが横目に顔を上げ、彼を睨む。メルヴィンは、自分の邪魔をされるのが大嫌いだった。
「ぼくは食事はいらない。みんなで取ってくれ」
そしてまた、下の装置に目を落とし、他の存在を遮断した。

「…またか」
火を灯す燭台がいくつも並ぶ、荘厳な長机の食卓には首領のメタナイトを上手に、娘のメタリアや、一歩置いて側近のメタナイツが共に並んでいる。
彼らの食事は、必ず共に取るものだった。それは彼らが常日頃、「一つ」であることを確認するための儀式でもあった。
「おにいさま、またおいそがしいの?」
無垢な瞳で桃色の体を持つメルヴィンの妹、メタリアが子首をかしげて問う。
「再三共に食事を取るように申し上げたのですが…」
「もういい。放っておけ」
メタナイトが冷静な声で全てを一蹴した。
「では、食事を始めよう」
メタナイトが告げ、いつものように、食前の祈りを捧げはじめる。


メルヴィンは食事を一度二度とらないこともままあった。そんなことより、頭が冴えて仕方が無い。ここをこうすればうまくいくはずだ、いいぞ、これで完成する……!
彼は機械を修理したり、新たな装置、武器を考え、それを試行錯誤するのに忙しかったのだ。
そんなある日、メルヴィンは父の部屋を訪ねた。父は不在だった。聡明なメルヴィンは部屋の右奥に通じる書斎に行くために、父の不在時でも、父の部屋を通る許しを与えられていたのだ。
彼は部屋の様子がいつもと違うことに気がついた。
微かに鳴っているはずの音が聞こえない。
それに気がついた彼は自然と、白い暖炉の方を向いていた。そこには金色の置時計があった。
時計は時を刻んでいなかった。
「(あれ…?この時計、壊れているじゃないか)」メルヴィンは思った。
(よし、直せるかどうか、やってみよう)
彼は置時計を取り、書斎へと引っ込んだ。
しかし。
上手くいかなかった。肝心な部品が壊れているのだ。職人たちのもとへいき、その部品がないか訪ねてみたが、これは外宇宙の特殊な時計で、欠けている部品も特殊な上、
「エナジースフィア」というエネルギー体が無ければ作動しない、ということだった。
そうか。ならもうこの時計は不要じゃないか。彼はそう判断した。
そして以前から気になっていた「ギミック」を暴くことに注力することにした。
彼はそれに魅了されていた。
ファイアーライオンのような、ふさふさとした鬣をもつ「ケモノ」が前脚を上げ、同じ高さくらいの柱のようなものを支えている、ポップスターでは見かけない、荘厳な作りの時計だった。
そしてその時計は、定時になると動き出し、美しい音を奏でた。
メルヴィンはその「機械」に日々魅了されていた。
どうやってあの美しい音を奏でているんだろう?と……
昼が過ぎ、夜になった。
父が部屋に戻ってきた。
書斎から光が漏れているのを見つけ、扉を開けたメタナイトは驚愕した。
そこにはバラバラになってちらばる部品と、その中心に座るメルヴィンが居た。
「何をしている!メルヴィン!!」

「うわっ」
メタナイツに拘束され、今まで見たことのない、石造りの暗い地下牢に連れてこられた彼は、彼の腕を掴んだ父によって乱暴に中に投げ入れられた。
すぐにがしゃり、と、鍵を閉じる音がする。
「人の物を壊したお前は罪人だ。罪人には、それなりの罰を受けてもらう。」
そして即座に、一同はその場を去っていった。
闇の中にメルヴィンは1人、取り残された。

「三日間、あそこに閉じ込めておけ。水も食料も、一切与えるな」
メタナイトは幼い子供には過酷とも言える罰を与えた。
メルヴィンを案じ、上申する部下を彼は強弁に退けた。
「三日三晩くらい何も摂らずとも、私の一族は死んだりなどしない」
「むしろ、これで死ぬようなら、私の跡継ぎなど勤まらない」

メルヴィンは一人だった。
子供であれば誰しも……寒さと暗さ、そして不安で怯え、泣いているだろう。
しかしメルヴィンの中にあったのは、そんなものではなく、ただただ「反感」と「不可解さ」であった。
「(いらない時計を分解しただけだというのに……なぜ、ここに閉じ込められないといけないんだ)」
父が怒った理由は彼には理解不能であったし、考える気もなかった。
どれ位時間が経ったかわからない頃、ふと、螺旋の石階段の影から階段の光が漏れてきた。
アックスナイトだった。どうしてもメルヴィンが心配で様子を見に来たのだ。
アックスナイトはおにぎりとたくあんの載った皿と湯呑みを載せたトレーを、鉄格子の目の前に置いた。
「メルヴィン様、お加減はいかがですか」
メルヴィンは答えなかった。
その代わり、ぐぅ~……と腹の鳴る音がした。
「本当は禁じられていますが、幼いあなたに三日三晩何も口にさせないというのは厳しすぎます。メタナイト様には内密にしておきますので、これを…」
次の瞬間、アックスナイトは彼が自分を光る眼で睨みつけていることに気が付き、たじろいだ。

「おまえ達の施しはうけない」
はっきりと、意思の宿った目で彼は言った。
「ぼくは納得していない。なぜ、ぼくがここに閉じ込められているのか。壊れた置時計を分解しただけで罰せられなければいけないのか。それを口にすれば、ぼくはそれを認めたことになる」
アックスナイトは驚愕した。まだ幼い子供である彼は、既に強固な意志と、自らの中に鋼鉄の如き、彼なりの信念を持っている。即ち、思い込んだら一途で、ひたすらに頑固ということである。
まるで父親のような……
彼が、未来の軍団を強固に束ね、率いてゆく資質の片鱗を見せ始めていることを、アックスナイトは明確にその時、感じ取った。
ぐぅ~…、という音が大きく響いた。
だが彼の目つきは変わることはない。
「わかりました。ですが、あなたのお身体に何かあれば事です。どうか、ご無理はなさいませんよう。」
そして皿は残し、その場を去った。
翌日、皿を下げに行くと、おにぎりはそのままで、かぴかぴに乾いていた。
背を向け、体を丸めて彼は寝ている。
…これ以上、我らが介入するまでもない。メルヴィン様は自分の決めた事を貫こうとしているのなら、我らはただそれを見守るのみ。
それから、ひっそりとメタナイツは夜ごと昼ごとメルヴィンの様子を見に行ったが、メタナイトの言う通り彼が弱っている様子は無さそうだった。
メタナイトの意図が通じることを願い、その度に彼らは静かに去っていった。

3日後。
メルヴィンがいい加減慣れてきた空腹と戯れつつ、ぼんやりと考え事をしていると、階段から誰かが降りる音が聞こえてきた。
メタナイツの1人か。そう思っていたら、違っていた。
メタナイト、その人であった。
そして、自分のいる目の前に立つ。
「メルヴィン。私がお前を此処に入れたわけが、分かったか」
今いる暗い石造りの牢獄のような、冷えきった声で父は言った。
メルヴィンは首を振りたかったが、
状況が悪化するのは目に見えていたので、彼なりに考えたことを言った。
「あの時計は、父上が大事にしていたものだったのでしょうか?時を刻まないのに暖炉の上に置いてあったということは、きっと時計として以外に、意味があったのだろうと」
「それもある、だが」
メタナイトは言った。
「お前は断りもなく、他人の物に手を付け、壊した。それが、最も許されないことだ」
「………?」
メルヴィンは、はっとしたように父の眼を見た。
「私のものに限らず、此処にいる者、そして軍団のもの。自分のしたい事に囚われて、他人の物を好き勝手に扱うことは許されない。軍団だけでなく、ここの外の世界でもそうだ。もしお前が、わたしの部下達の物を好き勝手に弄んだとしたら、私はもっと厳しい罰を与えていただろう」
そうだったのか。父上は、自分の時計を分解されたから怒ったのではなく、
「人のものを勝手に」分解したから怒ったのだ。自分のことではなく、他人の事を案じて怒ったのだ。
それに気が付かなかったなんて、ぼくは……
閉じ込められている間、一度も出ようとしなかった涙が、彼の金色の瞳に浮かび上がった。
「私の言う事が理解出来たか、メルヴィン」
「…はい」
メルヴィンは頷いた。自分が受けた罰の理由全てに、納得していた。
「なら良い。罰の期間は終わった」
階段の上で待機していたメタナイツが降りてきて、牢の鍵を開けた。扉が開くと同時に父は階段の上へと去り、後には自分とメタナイツだけが残された。

「…やはり、お腹がすいていたのですね」
コックカワサキのいるキッチンに連れ出され、木づくりのテーブルの上に出されたパンやサラダや、スープなどの食事を、夢中で頬張るメルヴィンをメタナイツは遠くから暖かい目で見守っていた。
その様子は年相応の、幼い子供そのものだ。
「三日三晩食べないとか、ワシならぜーったい、死んでしまうダス」
メイスナイトが震え上がるようなポーズを取った。
「お前は少しダイエットした方がいい」
ジャベリンナイトが軽く毒を吐くと、なにを、とメイスが彼を軽く小突くが、
小さい小競り合いはすぐに収まった。
「しかし、敵いませんね」
三日月の甲を被った、生真面目なトライデントナイトが言った。
「アックスナイト。貴方の言った通り、メルヴィン様は既に我らを導く資質に目覚めておられる。後は……」
「メルヴィン様が、健やかに育ってくださること。体も、そして心も。多くの事を学びながら」
そして祖父が孫を見つめるような目で、再びメルヴィンを見つめた。

「ゔっ」
メルヴィンが突然声を詰まらせた。
何か喉に詰まらせたのか。メタナイツが慌てて飛び出そうとすると、彼の口からぽつりと、意外すぎる言葉が飛び出した。
「……食事って、…こんなおいしいものだったんだ………!」
涙が混じっていた。
そしてむせびながら、また夢中で食事を頬張る彼を見て、メタナイツは彼の一回りも、二回りも大きな成長を感じ取るのだった。

それからもメルヴィンは何かを分解したり、何かを組み合わせて新しいものを作ることを辞めなかった。
その代わり、父の言ったことを理解してからは、不要になったり型落ちした機械を自分が貰ってもいいか持ち主に聞いて、許しを得てから分解に取り掛かるようになった。

「メルヴィン様、お食事の時間です」
アックスナイトが彼を呼びに来た。

「今、調整の正念場なんだ」
工場で脚立に乗り、保護用のグラスを掛けてヘビーロブスターを修理しながらメルヴィンが言った。

「メルヴィン様、お食事の時間です。お止めくださいませ」

アックスナイトの声に、ようやく、彼は振り向いた。
「分かった……。行こう」
そしてぴょんと脚立から飛び降り、グラスを外して壁にかけると、アックスナイトを伴い工場を出た。

あの事件以降、彼は何かに夢中になっていても、家族やメタナイツと共に、食事を取るようになった。
それが、栄養を取るだけでなく、絆を深める大切な時間だと、いつしか彼も理解するようになった。

余談であるが、処罰の後、メタナイトが部下に命じて壊れた、不要な時計を集めさせ、メルヴィンに袋一杯にして与えたのは、
いわゆる「親バカ」の現れであった。

 

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幸せの飽食

生きてるのって退屈だなーと思う時、それは満たされすぎているということだろう。むしろ、生活上の困難や精神的な苦痛もなく、心を煩わせるもののない現状を有難く思わなければならない。

明日、どうなってるかもわからない。

決して当たり前のことではない。「日々が退屈」と思えることは奇跡に近いことなんだ。

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もう一つのポップスター③/「真に強き者」

 

余りにも美しく、静謐な光だった。


その魂の中央に剣を突き立てた時、去来したのは殺意でも、手応えでもなく、仄暗い絶望だった。

そして、「ごちゃ混ぜのポップスター」が出来上がった。住人と、地形と、既存の全てが異次元の世界のそれと混じり合い、新しい世界ができた。 魂の破壊がもたらした膨大なエネルギーと、奇跡によって。 奇跡とは…奇跡は、奇跡だ。 あの二人のもたらした何かだと、想像するしかない。
ソルティ・シー。 私は以前にはなかったその名の海岸に二つ、花を手向けた。 彼らは私達すべてを含む、全ての人々の咎をたった二人で背負った。 そしてかの少女は、初めから、たった一人で それを背負おうとしていたのだ…
もう一人の「大王」が生き残らなければ、私はそれを知ることもなかった。

「塩の海」を意味するその場所は、異次元から来た「もうひとりの私」が最初に果てた場所だ。私は彼女を二度、殺した。 カービィそっくりの色をした、いっぱいいっぱいで、それでいて、どこか抜けているような少女だった。 そして私そっくりの色をした、もうひとりのカービィ。昔の私と同じように人を寄せ付けない、頑な目をしていた。
消えたふたりは魂となって蘇った。
私は彼らに、二度目の引導を渡した。

「星の夢」との戦いの時と同じく、再びロボボアーマーを介して艦と融合したカービィをも伴う攻撃の末にも、「それ」は傷の一つもつかない。まるで無抵抗なのに、こちらの攻撃はまるごと吸収してしまい、何一つかわらないのだ。
カービィは消耗している。
埒があかないと判断した私は独り艦から離れ、生身で彼らの本体に近づいた。
白い羽をくぐり抜け、中央に近づくにつれて、「それ」が明らかになった。
私は当惑した。
そこには見慣れた姿があった。
(ハルバードにそっくりだ)
私は思った。
四対の巨大な蝶の羽にかこまれたような、淡く真白に輝く、
しかしあまりに羽に対して小さな、「ハルバードのようなそれ」は
本体であり、本体ですらなかった。
その上に、彼女がいた。
乗る艦(ふね)と同じように、淡く、白く光り輝く鎧をまとい、ただ静かに、そこにいた。
死装束。
私は真っ先にそれを思った。
消えたはずの彼女が蘇った。つまりはそういうことなのだ。
彼女を護る艦は、「彼」だった。
彼女がそれを私に教えた。
「最後までがんばろうね、カービィ!」
彼女は大きく手をかざし、光の羽がゆるりと羽ばたく、大きな空に向かって呼びかけた。それに応えるように巨大な羽がゆったりとなびくと、その羽から出ている無数の白い糸が密度を増した。そして私が思わず振り返り見た、ポップスターを丸ごと覆っていく。
私は「これ」が、ふたりであることを理解した。そして彼女の言葉からは、怒りや憎しみは少しも感じられなかった。
「貴様らの目的は何だ」
私は「彼女」に剣を突きつけ、聞いた。
「わからないけど」
彼女はすこし、子首をかしげた。
「ぼく達は今、ここにいる。ということは、もしかしたら、やれることはやれるんじゃないかって」
「やれる事?」
彼女の言うことに付いていけない。彼らの意図、そしてポップスターに起ころうとしている事、何もかもが理解不能だった。
「僕は、ほんとうは僕たちの世界の人も、君たちの世界の人も、みんな助かればいいのにって、そう、叶わないことだって分かっていながら、願ってたんです。
僕達のしたことからいえば、信じてもらえないでしょう。それは、最もです。
僕たちの偉い王様が、教えてくれたんです。
魂だけになった人は、奇跡をおこすことがあるって。
一度死んじゃったけど、またここにいるってことは、
きっとそうなのかなって」
彼女は明るく、はにかんだ。声がそう語っていた。
「どういう意味だ」
「どうなるか分からないけれど、もし陛下の言う奇跡というものが本当にあるのなら、僕たちで、やってみようと思います」
「力を貸して、くれますか」
「何?」
力を貸せ、とは。
両腕が、広がった。
「……まさか」
口から呟きが漏れる。

メタナイト。ぼくたちを、その剣で破壊してください。
ぼくたちはもう、戻れません。どのみち、ぼくたちがこのままでいれば、何をしだすかわかりませんし、それに、
何か奇跡というものが起こるなら、きっと今が、その時なんです!」
彼女は笑った。
かつん、と金属の音がした。剣が降りていた。
彼女に刃を向ける気持ちが完全に、失せていた………。
「私は」
思わず、声が滑り出た。

どうすればよいのだ?

喉が震えていた。
彼女は、腑抜けてしまった私の言葉にならない問いに答えた。

メタナイト。これは君にしか頼めません。こうするのがいいって、なんとなくだけど、そんな気がするから。これは、君にしかできないから。これは、ぼくの勘です」
そう茶目っ気たっぷりに言う様は、余りに浮世離れしていた。まるで陽気な春の日に、いまから散歩にでもいこうというような口調ではないか。
「あ、いま不安だって思ったでしょう?
でもぼくの勘は案外よく、当たるんですよ?」
確かに。彼女の「勘」にしてやられ、
私は顎を蹴られ、重症を負ったな。
敵同士のはずなのに。私は今の彼女の言葉に思い出話のような余韻すら覚えている。私は。
彼らをまた、殺すのか?殺さねばならないのか?

そして、彼女は笑った。
「また会えたらいいなあって、思ってる」


今度は君のこと、もっと沢山知りたいです。
できたら、友達になれたらいいなあ、
…なんてね。

 

すべてが終わり、わたしは独り浮遊する、真っ平らなアステロイドの岩の上に取り残された。
耳には、その身に突き立てた剣を通して強制的に伝わった、彼らの音にならない「最期の言葉」、その残響が、いつまでも響きつづける。

 

だいすきよ、だいすきよ、カービィ

ぼくたちは、これからもずっといっしょだよ。

うん、ずっといっしょにいられるわ。これからもよろしくね、カービィ

ぼくもきみがだいすきだよ、メタリー!やっと、きみにいえたよ。
もっとはやく、ちゃんといっておけばよかったな。

いいの。
これからはずっと、いっしょだから。

そうだね。ずっと、いっしょだ。
こういうの、すこしてれるけど、ぼくはいま、すごくしあわせだよ。
だって、だれよりもかわいくてしかたがない、きみがそばにいるんだから。

わたしもよ、カービィ。うれしくて、どきどきして、でもちょっとなきそうなの。


わたしたち、もうはなれないわ。

 

……………………

 

「そんな」
何という。なんて馬鹿な。
「私がより強い力を得た、そのために努力をしてきた、その帰結がこれか」
「なんて、馬鹿な………!!!」
ギャラクシアを無造作に突き立て、私は脱力した。
蝶と、白い糸は消えていた。
私の頭と体は、もう動くことを一切拒んでいた。
少なくとも、今の私にあったのは、安堵や、勝利の余韻などではなかった。
もっと酷い、「耐え難い何か」だ。
耐え難い何かは、口を通して、私の中から出た。とても他人には聞かせられない、苦く、情けなさすぎる声だった。

二人の、「もう1人の私達」の存在は
私に、しつこい爪痕を残した。
私は、今まで求めていた「強さ」について、疑問をもたなかった。だけど、本当に私が求めるのはそれなのか、
わからなくなってしまった。

今までの私が求めていたのは、強者を打ち負かす力だけだった。私はただでさえ困難な敵で、「魂化」で、強大になった彼女の魂を、この手で砕いた。
しかし、それを成しえたはずなのに、虚しさしか残っていない。

元は脅威であった「あれ」は元は年端も行かない、年相応の無邪気さを残した、ただの子供たちだったのだ…
今のまま剣の道を極め、戦う力が強くなることも必要には違いない。
だけどそう、「強くなったとしても、」それだけで、私には何が出来るのだろう?

以前私は「より強い、戦う力を得ることで私にとって大切なものを、この愛する星と世界を守ることが出来る」という結論に至った、しかし…

それすらも、できなかった。
彼女や彼の笑顔一つ、守れなかった。
この世界を、二つの世界を救ったのは彼らだ。
私はなにもしていない。

私は凡ゆる武器や術、火器までもを駆使し、なりふり構わず戦う彼女を「似非物」と罵った。 それを心の底から後悔している。

「もし、あの時」彼女の決意を知っていれば。

「もし、あの時」彼女の苦しみを共有できていれば。

彼女も、彼も救えたかもしれない。共に生きることができたかもしれない。 そう「もし」と願うことしかできないくらい、 私はあまりにも、無力だ。無力だった。
威圧すらしてくる、刺々しいオレンジ色の夕日に染まりながら、君だけでも生き延びて、と仲間を救えなかったことを、友に詫びながら涙する彼女の顔も、そして宇宙(そら)の上で、両腕を広げるその姿も、脳裏にこびり付いて離れない。私は、彼女の姿を、二人の生々しい「生き様」を目の当たりにして、今まで描いていたのとは違う、「強さ」を
新しく知ったのだ。
斃れた彼女は「力のないこと」を嘆き、それを切望していた。
私には、ほんのわずか、彼女よりもそれがあった。しかし、
彼らはそんなことなど何にもかからないくらいの「強さ」を持っていた。

自らの犠牲をも厭わず、敵をも憎まず、
自らの眷属でもないあらゆる星の人々をただ純粋に想い、生かそうと、
彼らが決意を持ってそれを成し遂げたのは、
彼らの仲間たちへの、そして互いへの想いがそれほど、深い故だったに違いない。
そしてその想いは突き抜けて、私たちにまでも降りかかった。 それに言葉があるのだとしたら、紛れもなく、『愛』と呼ぶのだろう。
そしてその愛こそが、彼らの「強さ」だった。 自らの犠牲をも厭わぬ、存在を違えるものをも憎まぬ、高潔な愛。

今の私には、ない強さ。

私は彼らのように「強く愛する」ことが
できるのだろうか? 今は、答えが出ない。ただ。
もしまたいつか、どこかで会うことができるのなら、
今度は君達の、名前が知りたい。
私はメルヴィン。メルヴィン・マイカ・メタナイト

私は無言で、オレンジオーシャン、彼らの世界ではマンダリンマリーンと呼ばれた橙の日に染まる、白い花束二つに手を合わせた。