momogenics!🍎🥧

星のカービィ邪道創作(ももメタ専

深夜のパフェ

皆が寝静まった夜中、兄上がロビーで、「いいもの」を食べているのをぼくはちょくちょく見かける。

それはパフェだった。スポンジケーキとチョコレートのアイス、バニラアイスが重なってて、チョコレートの扇とクレープクッキーの剣で飾られた、ちょっとおしゃれなパフェ。兄上は、いつも同じものを食べている。

「兄上」

始めてぼくがそれを見かけて声をかけた時、ビクッ!て肩をこわばらせて振り向いた兄上はかわいかったなあ。

それから、なにかばつが悪そうなのも。ひょいひょいのぞきこんで一口せがむと、兄上は仕方なさそうにぼくに一口くれた。でもそれだけ。それからは、見かけても気付かないふりをしている。もっとも、見かけた時には口元が緩んでくるのを手で抑えながら、陰からそれをずっと見ているんだけど。

自分のお部屋でも食べているのかもしれないけど、あえて誰かが通るかもしれない「ロビー」で食べるのもいいんだろうな。

ある時、ぼくは深夜の警ら当番の時、天井が比較的開いた、大きな通路を歩いていた。

流石に深夜、誰もいない。ぼくや兄上は夜目が聞くので明かりは要らないのだけど、かまぼこ型の天井はただ途方も無く大きくて、通路に風が吹く度にゴオンッと音が響くし、足音まで大きく響いて寂しい。そして、ちょっと寒かった。

ふと見ると、前方がぼんやりと明るい。また少し歩くと、キッチンにまだ明かりが付いてるのが見えた。

「まだお仕事ですか、コックカワサキ

ぼくは中にいるコックカワサキに声をかけた。

コックカワサキは、お玉を持って何か味見をしていた。コンロには小さいお鍋がいくつか煮えていて、なにかを試作しているようだった。

「ええ、まあ。もうちょっと」

コックカワサキはぼくに振り向くと、柔和な笑顔を見せた。

「明日も早いんでしょう。早く寝ないとだめですよ」

「メタリア様は、お休みにならないのですか?」

「ぼくは今夜の警ら当番なのです」

「そうでしたか。ご苦労さまです。…あ、ちょっと待って下さい」

「なんですか?」

「少し」

急ぐ用事もないので、ぼくは言葉通り小さな木のテーブルにある、丸い椅子に腰掛けてそのまま待つことにした。

テーブルの上には、ノートが沢山広げられている。たくさんの字や図がびっしりと書かれていて、彼が料理のことにすごく心を砕いているのがわかる。味付けのことから、病人食のことまで。ぼくたちにおいしく食べられる食事を出すために、いろいろ試行錯誤しているんだなあ・・・

 コックカワサキは、暖簾の向こうに消えてしばらくなにかごそごそとしていたけど、やがてトレーに何かをのせて戻ってきた。

 「うわぁ」

ぼくはつい歓声を上げてしまった。

「これ、兄上のパフェなのです!」

そう、兄上がいつも食べているあのパフェだった。でも違うのは扇のような部分がホワイト・チョコレートに、まっ白いクレープクッキー、

そして重なっているアイスがピンク色と白。上にあるピンク色のアイスは銀色の砂糖菓子で星空のように飾り付けられている。下にはスポンジケーキとクリーム、ぼくの大好きなモモが重なっている。白とピンク、とにかくぼくの大好きな色だけで構成されている。

「すっごくかわいいのです!」

 「メタリア様をイメージした、メタリア様スペシャルです」

ぼくは興奮も冷めやらぬまま仮面をずらして顔を出すと、持つ側の先に黄色い星の柄がついた、長いスプーンをとった。

「いっただきまーす、なのです!」

一番上に乗っかったピンク色のいちごアイスを、周りのクリームごとすくってパクリ。

「ん~!」

すっごくおいしい!

新鮮ないちごの香りとクリームが口の中でとろけて

ぼくは頬をおさえてぶんぶんと首を左右に振った。

「なにこれ、コックカワサキ、これ、すっごくおいしいのです!」

 「お気に召していただけて、光栄です」

コックカワサキは首を右に傾けて、にっこりと笑った。

 

頬杖をついてすこしお下品にパフェをつつきながら、ぼくは少し意地悪く、コックカワサキに聞いた。

「なんで、ぼくにはパフェを毎日作ってくれないんですか?」

「メタリア様は、年頃の女の子でしょう。夜中に毎日パフェを食べていたら、太ってしまいます」

「兄上は太らないのですか?」

メタナイト様は日々、常に動き回り、忙しく過ごしておられる…そういうことです」

そう、兄上はいつも大変。

いつも組織のことを考え、ポップスターのことを考え、いつも休みなく動いている。自分のことも考えられないくらい。だから兄上にとってあのパフェは、大事な時間なんだ。

比較的ゆっくりとパフェをたいらげ、ぼくは椅子から降りた。

「ごちそうさま、コックカワサキ。君も、頑張るのはほどほどにね」

「ありがとうございます、メタリア様。あなたの声で元気が出ます」

キッチンを出ると、入ってくる前と同じ通り、漆黒の闇が広がっていた。

「ぼくもがんばりましょう」

ぼくは真っ暗闇の中で警らを再開した。またいつか、いいことがあるかな?って思いながら。