さみfulldays♪

さみ日常雑感食べたものの話

断片/機械仕掛けの騎士⑤

「うう………」
アリアは、さっき吹き飛ばされた時の衝撃の後から、猛烈な眩暈と頭痛に襲われていた。
アリアが走るアクシズアークスの内部は、今や光線兵器と物理兵器、炎と弾薬が飛び交う、文字通りの地獄と化していた。
(おにいさま……兄上………)
記憶が混濁しながらも、
仲間を逃がせという「兄」の命に従うべく、アリアは攻撃と飛散する瓦礫を果敢にかわしながら、非戦闘員たちの集結する第二生産エリアへとひた走る。

「アリア」
どこからか、美しい声が聞こえた。
顔を上げると、黒いヘルメットに、青緑の長い髪を持つ女性。彼女らの所有者、ベアトリスがいた。
「ベアトリスさま…」
アリアの目の前で遠く佇んでいたベアトリスは、アリアの元に近づいてくる。
マントもアーマーもすす汚れ、ぼろぼろになったアリアを見て、ベアトリスの蒼い瞳が伏せられた。
「可哀想に。怪我をしたのね」
そして、擦り傷だらけになったアリアの顔にそっと手を伸ばす。
「これぐらい、大丈夫なのです、ベアトリスさま。アリアはとても、元気なのです!」
アリアは、やや大げさ気味に、ベアトリスに心配をかけまいと精一杯に無邪気な笑顔を作って答えた。
ベアトリスは優しくアリアに語りかける。
「アリア。よくここまで来てくれましたね。独りで逃げてきて、辛かったでしょう」
「M-71105を残して」
その一言は、アリアの心に揺らぎを与えるには十二分な威力であった。
(おにいさま……!)
今こうしている間も、「おにいさま」は敵と交戦している。無力な自分は、兄が死地にいるというのに何も出来ない。何の役にも立てない。
そう、何も……

「アリア。あなたはM-71105の助けになれるわ。」
「!」
拳を握りしめ、俯いたアリアの顔がばっと上がる。
「アリアは…おにいさまの助けになれるのですか?」
「そうよ。なれるわ。」
「本当に、おにいさまを助けられるのですか…おにいさまと共に敵と戦えるようになるのですか?」
「そう。アップグレードを受ければね。」
今まで大粒の目をうるませていたアリアは
、両目に強い意思を宿し、ベアトリスを見た。
「アリアは…アップグレードを受けます!おにいさまと一緒に、敵と戦える力をください!」
「ええ、勿論よ。あなたには、資質があるわ」
ベアトリスは満足げに頷いた。

「いらっしゃい、アリア。すぐにアップグレードを行います。ここの従業員たちはわたしに任せて。」
「はい!」
アリアは迷うことなく、改造ラボへと先を歩むベアトリスに続いた。


メタナイトボーグとの戦いで致命的な破損を被ったステラマキナを破棄し、どうにか社長室の近くに降り立ったメタナイトは、分厚い鋼鉄の扉を切り裂き内部へと踏み入った。
そこには彼を待つ者がいた。
「ごきげんよう、メタナイト様」
複数の被支配エリアで、見覚えのある女。
「まだ生きていたか」
「ええ、お陰様で。再びようこそ、アクシズアークスへ。考えを改め我がカンパニーに入社しようというそのご意思、大変嬉しく思いますわ」
メタナイトは無言で背のギャラクシアに手をかけた。
「ええ。期待されていることでしょう。強者のメタナイト様には、それに相応しいおもてなしをしなくては。出なさい」
ベアトリスがぱちん、と指を鳴らした。
ぐわんぐわんと轟音が鳴り響き、天井のハッチから鎖で吊るされた何かが降りてくる。
それは黒い、「ウサギのような丸い物体」。
黒い外套を身につけた桃色の少女。彼女は両腕を鎖に吊るされたまま、目を閉じている。

(やはりか)
こんな事なら、メタナイトボーグを排除するより、攫う形でも回収しておくべきだった。
非戦闘員扱いだと油断したばかりに!
メタナイトボーグが攻撃をしかけたとはいえ彼女はしばらくは安全だと判断し、 そのままどこかに行かせてしまったことをメタナイトは猛烈に後悔した。
「あなたの妹君、メタリア姫ですわ。
会いたくてたまらなかったでしょう?」
ベアトリスが嘲笑を込めてメタナイトに語りかける。
「随分と悪趣味な格好をさせているな。
お前の趣向とは実に一致するが」
「昨年以降、人材レベルの統一化を図るため、すべての入社希望者に対して入社試験を義務化致しまして。メタナイト様にも、我が社の入社試験を受けて頂きます」
メタナイトを無視してベアトリスは続けた。
相手を無視し、自分の言葉を一方的にまくし立てるベアトリス。そんな彼女に、メタナイトは敵意とはやや違う、寂寥感みたいなものを感じていた。
(この女、頭がいかれているのか。
あるいはどこか捨て鉢なようにも見えるな。内部の警備も、明確に「穴」があった。まるで、ここに来させるためのように。そしてそれは、罠ですらなかった。今、この瞬間までは)
「フフフ……貴方があらゆる意味で、最も敵に回すのを恐れた相手かもしれませんわね。あなたの「入社試験」には
我が社のテクノロジーにより純粋な戦闘マシーンとして最適化されたメタリア姫、もとい、『アリアテンペスト』がお相手致します」
アリアテンペストと呼ばれた彼女は、ぱちりと目を開けた。
つぶらな緑色の瞳はガラスのように透明で、無表情にメタナイトを見つめている。
「この「入社試験」はアリアテンペスト、あるいはメタナイト様のいずれかの死亡をもって終了します。いかなる理由があっても途中棄権は認められません。メタナイト様、あなたのご健闘をお祈りしております」
ベアトリスが「かかれ」と合図するように腕を振りメタナイトを指し示す。
鎖から解き放たれたアリアテンペスト、黒いアリアは無表情のままメタナイトに向けて突進した。