momogenics!🍎🥧

星のカービィ邪道創作(ももメタ専

聖者はやってくる(ももメタとメタナイツ)

 

「星の杖の聖夜祭 」
歴史評論家の一説によると、この日は星の光を吸い込んだ星の戦士が「星の杖」をもって宇宙に蔓延る悪夢を打ち破り、夢を宇宙に返した日だという。
無論伝説は伝説にしか過ぎず、楽しいことが大好きなポップスターの住人にとっては多くの場合、伝説の英雄を讃え、祝うのと同時に、集まって騒ぐ為の口実である。
メタナイト軍団も例外ではなかった。
軍団で公式にそんな行事はないものの、軍団員たちはそれぞれより集まり、思い思いに一年に一度の夜を祝う。
流石に、騒ぎをあまり好まない首領のメタナイトは例年通り、静かに過ごしているが。
彼の妹、メタリアもつい先程まで、彼の部下メタナイツと共に彼らの居室でささやかなどんちゃん騒ぎに興じていたのだ。小さな水平ワドルディも交えて。今はその後の事である。
規律で宵の口も回ったところでお開きとなり、軍団の者達もほぼ寝静まったころで、メタリアは次なる作戦の準備を始めていた。
しんしんと冷える黒い闇夜の中、
赤いふわふわとした白い毛玉がついた三角帽を被り、あらかじめ用意してあった彼女の身の丈はあろうかという白い巨大な袋を担ぐ。
「モモサンタ、出動ダスな」
「はいなのです!」
メタリアは力強く頷き、不敵に笑った。むしろ、聖夜祭の本番はここからである。軍団内にいる小さな子供たちに、プレゼントを配るのだ。
親の代からここにいるものもいれば、幼いながら強い決意を持って故郷を飛び出し、あえてここにいる者もいる。あるいは始めから、親も、家もないものもいる。

きっかけは、ある日のワドルディの言葉だった。
去年のこと、メタナイツとメタリアは今年の内々などんちゃん騒ぎの準備の話をしていて、ふと、赤い帽子の「聖者」の話題になった。
「ふしぎですね。ねえ、サンタさんってほんとうにいるんでしょうか?」
「そんなの……」ふとメイスは口に出し、それからはっとしたように、からっとした口調で言い換えた。
「いるかもしれないダスなぁ!」
「そうですよね!きっといますよ!」メタリアが頷いた。
「実は、子供たちとサンタさんはいるか、いないかって話になったんです。いないって言い張る子もいれば、絶対にいる!っていう子もいて。ぼくは、どう答えたらいいかわからなかったんです。だって、誰も見たことがないから。ぼくはいると思う、って答えました。でも……」
ワドルディはそこで、言いよどんだ。
彼らのところに聖者がこなければ、聖者は「いない」のと同じなのだ……
ワドルディも彼らと同じくらいのまだ幼い子供だが、メタナイツの側に使えていたこともあって、普通の子供よりはずっと大人びて、思慮深い。そんな彼は、決して自分のことではなく、子供たちのことを案じたのだ。
(わどわどちゃん…)
メタリアは他の子供たちのように、無邪気に聖者を待つこともできない彼を思い、とても切なくなった。
メタリアは、ワドルディの両肩に手を置いて、満面の笑みで言った。
「絶対にいますって!わどわどちゃん、サンタさんは、いい子にしてる子のところには絶対にくるんですよ!だから!」
「お祭りの夜には、おっきい靴下を用意しておいて、ちゃんと、サンタさんがきてくれますように、ってお祈りしてからお休みするのですよ」
にっこりと笑うメタリアがやけに自信満々なように感じたが、彼女がそういうのなら、本当にそんな気がする。ワドルディは笑顔で答えた。
「はい!」


「ひええ、メタリア様の徴収ダス~!」
メタナイツの居室。
各人の個室と繋がる前室であり、畳敷きの居間とも言える共有スペースに、
メイスナイトが大げさにジャベリンナイトの傍に逃げてきた。
「来たか」
ジャベリンが息を呑む。その予感通り、それはやって来た。
「さあきみ達、惜しみなく出すのです。今年の、「サプライズ」へのカンパを!」
のっしのっしと大股を開き、巨大な袋を引きずったメタリアが堂々と、居室の入口に現れた。
(カンパといいながら、洗いざらいプレゼントになりそうなものを探し出し持っていく。まるで借金取りか、ガサ入れじゃないか)
ジャベリンナイトは、この後繰り広げられる惨劇、ただし、ほぼメイスナイトにとってのー
を予想し、彼に若干同情した。
軍団から子供たちにプレゼントを配るための予算など出るわけもなく、
メタリアは自分のポケットマネーの他にも有志を募り、少額づつながら子供たちのプレゼントを用意するための予算を用意していた。
一応、メタナイツと同等の幹部扱いであり、今は主に新人教育を務める職務にあるメタリアにも給与は出る。
しかしそれもメタナイツと比べるとお小遣い程度のもので、とてもじゃないがそれだけでは全ての子供たちへのプレゼントは賄えない。
そこで、軍団員にも任意で協力を求めるわけだが、筆頭幹部であるメタナイツに関してはほぼ「強制」かつ「情け容赦のない」ものであった。「普段は高いお給料を貰っているんだから、少しは協力するのです!」
無論、アックスナイトを始め、メタナイツはトライデントもジャベリンもメタリアの頼みとあれば惜しみなく協力するのだが、問題はへそくり隠しの常習犯メイスだ。彼も協力しないではないものの、居室のあちこちに大量のへそくりを隠しており、結果、彼女の「本分」と言えるものを引き出し、部屋がめちゃくちゃになる…
他の者にすればいい迷惑である。
昨年はメイスのへそくりがごっそり徴収された。メイスも今年はメタリアに見つからぬよう隠し場所を巧妙に変えていたのだが、メタリアの野生の勘と卓越したゲリラ戦の技術により、艦内のへそくりはほぼ全て探し出され、無事だったものは1割にも満たなかった。

「あああっ!メタリア様、それだけはご勘弁を~!!」
無造作にものが置かれたメイスの部屋に押し入り、積み上がったプラモデルの空箱をあけ最後の無敵キャンディを探しあてたメタリアのマントに、メイスが負いすがろうとする。
「兄上にすべてを話されるのとへそくりを失うの、どちらがいいのですか?」
「うぅ………」
メタリアに一蹴され、メイスはマントから手を離し、すごすごと引き下がった。
「ありがとう、みんな!これで今年のプレゼントはどうにかなりそうなのです!」
宝探しを終え、ほくほくとした顔で、メタリアは「協力」の収穫物を担いだ。
「我々で、お役に立てるのなら」
ジャベリンの言葉に、メタリアは満足気に、大きな瞳をぱっちりと開いてうなづいた。
「やっぱり、きみたちは、人の上に立つ人たちなのです。みんなきっと喜びます。わどわどちゃんも」
「自分たちも子供たちが喜んでくれるのなら、嬉しいです。彼らは明日の軍団を担う者たちですから」
いつも自分たちの周りであくせく働くワドルディは、メタリアにとってもメタナイツにとっても、もう自分たちの弟分のようなものだ。小さな体でいつもひたむきに仕事をこなし、休みの日でもなんだかんだで毎日働いている。
いつも一生懸命な彼には、この日ぐらいご褒美があってもいいだろう。ジャベリンはかすかに微笑した。
その側で、ショックから立ち直れないメイスが身を伏せ嘆いていた。
「やっぱり、メタリア様にはかなわないダス……いっそ、今度から支部に隠すか……」
「お前、本当に懲りないんだな…」
ジャベリンは予想通り、目も当てられないくらい物がひっくり返されなぎ倒され、めちゃめちゃになった居室を見渡した。
「全く、稼ぎを不当に隠そうとするからこういうことになるんだ。起きろ、メイス。さっさと掃除するぞ」


そして今、当日の夜である。
雪が降っていない夜だった。
メタリア達の立つバルコニーの境目からは、基地の全景と、雪に埋もれたはるか眼下のプププランドの大地が見渡せる。
結局その後もプレゼントの梱包からなにから手伝わされたメタナイツも、赤い三角帽を被り袋を担ぎ、彼女を中心として共に一列に並んでいる。
メイスナイトはへそくりをむしり取られたことも既に気にしておらず、今はメタリアと共に子供たちへのプレゼントを配る気力に満ち満ちているようである。
待つ間に気力を持て余し、ほっ、ほっ、と軽やかにステップを踏むメイスの横で、メタリアは神妙な面持ちで告げた。
「では、打ち合わせ通りに。」
「はっ」
「御意」
「了解です」
「いつでもOKダス」

「ももメタちゃんウィズメタナイツ!『聖者の行進』作戦開始ぃー!なのですっ!!」
「行くダスよ~!!」
メタリアの言葉を合図に、メタナイツが四方向に散開する。
メタリアも急降下し、真っ先に大好きな、水平ワドルディの部屋へ向かう。

軍事基地の建物には煙突がないので、普通に袋を引きずり入口から入ったメタリアは、ベッドで安らかに寝息をたてるワドルディを見て微笑んだ。
「きましたよ、わどわどちゃん。『ももサンタ』さんが」
そして彼を起こさないよう慎重にベッドに寄り、オレンジ色の大きな靴下にそっと彼の帽子の色でラッピングされた包みを入れる。
「おやすみ、わどわどちゃん。明日を楽しみに」
一件目を終え、次の場所へと向かうべくメタリアはそっと部屋を出た。

アックスナイトがプレゼントを靴下に入れている最中に持ち主が目を覚ましてしまい、闇に浮かび上がる骸骨マスクに盛大に泣かれてしまう、などのハプニングはあったものの、
翌朝の基地は子供たちの嬌声でにぎやかであった。
夜明けに眠り、昼過ぎに起きたメタリアにも「聖者」が来たようだが、それが誰なのかは、知る由もない。

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