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さみfulldays♪

さみ日常雑感食べたものの話

「ケーキのたべかた」(カービィとワドとモモ)

 

モモちゃんが、イチゴのタルトを運んできた。
僕たちのきょうのおやつ。
1個は大王様の。そしてもう1個は、ぼくたちの。
今日はモモちゃんがおやつ当番だった。モモちゃんがつくるピーチパイやタルトは、きらきらしててきれいで、そしてとてもおいしいんだ。
「おまたせ~、なのです!」
両方の肩当てに赤いリボンをつけ、ふりふりとしたまっ白なレースのフリルのついたピンクとイエローのグラデーションになったマントを纏った、いつもの格好のモモちゃんが、タルトの乗ったお皿をのせたトレーを右手に掲げ、くるくると回りながら登場した。
「はいっ!今日のスペシャルスイーツ!モモちゃん特製、イチゴのタルトー!なのです!」
ぼくたちが円を三等分するように座る木目のテーブルに、あざやかな赤い色が座る。
それを目の前にしたカービィはもう、目も口も大きく開けてキラキラさせ、いまにもとびついてしまいそうだ。
「ぷにぷにちゃん」
「まーだ、なのですよ」
それを見越したモモちゃんが、にっこり笑って、右手の人差し指をそっと、カービィの口にあてる。
「わどわどちゃん、タルトを切ってくださいな」
モモちゃんがこちらを向き、ケーキナイフをぼくに渡してくる。
「あ、はいっ!」
モモちゃんから預かったナイフを持ち、ぼくは確実に公平になるように神経を使いながら、タルトを6等分にきってゆく。
紅茶の蒸されるいい匂いがする。
切り終わって目をあげると、白い陶器のポットをくゆらせるモモちゃんと、それに釘付けになっているカービィ
「うふふ」
モモちゃんは笑うと、カービィのティーカップに紅茶を注いでゆく。
はちみつのような、あまい香りが広がる。不思議と心が優しくなる匂い。
いけない。この千載一遇のチャンスを逃す訳にはいかない。
ぼくは直ちに、三人分全てのお皿に、タルトの切りはしを乗せていった。
カービィはポットから目を下げ、濃いあめ色の液体をじっとみつめている。
「いい匂いでしょう?タルトをまず一口たべて、それからゆーっくりお紅茶を飲む、これが至福の時なの!」
ぼくとモモちゃんのカップにも紅茶が注がれ、僕たちはそれぞれの席につく。
「お砂糖とミルクは?」と、モモちゃんがきいてくる。
「あ、ぼくはお砂糖をひとつ!」
「ぷにぷにちゃんは?」
「ぱゆ!」
「両方、お砂糖はふたつですね?」
「たや!」
カービィがこくこくと頷く。
すごいなモモちゃん。カービィの言葉が分かるなんて。ぼくや大王様は「だいたい」でしかわからないけど、どうやって会話してるんだろう。

「では……いっただきまーす!なのです!」
ぼく達は手を合わせ、いただきますの挨拶をする。カービィも。
「今日は、初めだけ、スペシャルな食べ方をしましょうね、ぷにぷにちゃん。」
モモちゃんがいった。

「ぽよぉ?」カービィは首をかしげる。
「一口でいくのもおいしいけどー、でもこうやって食べると、もっとおいしいの!」

「まずは一口~」
言って、モモちゃんが最も先っぽの、赤いイチゴのたっぷり乗った部分をフォークで「さくっ」と切り、フォークに刺してぱくっとほおばる。ぼくも同じように「ぱくっ」とほおばる。
イチゴをお砂糖で煮た甘さと、たっぷりのカスタードクリームがとろける感じと、さくっとしたパイから感じる香ばしい香り。
じっくりタルトを味わって、そして紅茶を一口。
いい香りと甘い匂い、両方がぼくの口の中で甘くやさしくひとつに溶けてゆく。
おいしすぎて、ぼくはつい顔がにやけて、ほっぺをおさえてしまう。
それはモモちゃんも同じみたいだった。
「ん~!」
右手にフォークを握ったまま、目を閉じてぶんぶんと顔を両方に降る。
それをみていたカービィも面白そうだと思ったのかはわからないけど、ぼくたちのマネをした。そして、
「ん~!!!」
まんまるなお顔をますますまんまるくさせて、ぶんぶんと顔を両方に降った。
一言で言うと、「満足な表情」。
で、その食べ方を気に入ったらしい。カービィは同じ食べ方を続け、モモちゃんも首をぶんぶん振りつつ、ぼくたちはゆっくりおやつを楽しんだ。
最後にはモモちゃんがカービィに自分の1切れを食べさせたり、その逆もしたり、それがぼくにもきたり……最初はお上品な感じだったのに、もうめちゃくちゃ。
でもなんか、こうしてじゃれあっていたり似たもの同士なピンクの2人を見てると、すごく楽しい。
「みんなで食べると、おいしいですね、ぷにぷにちゃん」
「ぱや!」
カービィが両手を上げて応える。
こうして、モモちゃんはカービィに、ケーキの食べ方を教えた。
すごいやモモちゃん。お勉強みたいに「教える」わけでもなく、自然とカービィにテーブルマナーと、みんなで食べることを身につけさせてしまった。
以前は、もう「食うか、食われるか」の世界。カービィが食料庫でおやつを盗み、大王様とぼくで追いかけっこする毎日だった。たまにならいいけど、毎日となると流石に疲れるし、気が気ではない。ゆっくり休みも取れず、カービィへの敵意めいたものすら出てくる始末だった。
それをモモちゃんが変えた。
今だからぼくは納得してる。モモちゃんはじつは、とてもいい家の出身だってこと。なにせ、本当のモモちゃんは、あの厳格で、気高く、みんなに憧れられている反面強く畏れられてもいる、「あの」騎士メタナイト様の妹だったんだから。
そして、その妹さんがここにいるのも。
お兄さんのメタナイト様が、あんな恐ろしい事件を起こして、それを止めさせたくて、モモちゃんはここに逃げてきていた。
モモちゃんは「ぼくはただ、つらいことから逃げ出したおくびょう者です。止めたのはぷにぷにちゃんです」というけど、
ぼくは違うと思う。メタナイツがやらかしたことに反対する強い気持ちと勇気がなければ、慣れ親しんだ家を飛び出して、ここに「モモ」という本当とは違う名前を名乗りメイドとして雇われに来なかったと思うし、たとえカービィと一緒でも、鎧を纏ってあんな巨大な戦艦に、自ら立ち向かって行かなかったと思う。
そんな勇気のある子なのに、今は、幸せそうーにニコニコとタルトをおっきな口をあけてほおばる、その顔や仕草はとてつもなく可愛い。
ぼくはなんだか、たびたびこの子を守ってあげたくなる思いが出てくる。この子の笑顔を守りたいというか、ずっと笑顔でいてほしいというか、
もう、あの時みたいに、辛くて、泣いてほしくないというか。
ぼくにそれができるかな?
いや、モモちゃんは多分ぼくより何倍も強くて、敵が来たら自分でノックアウトしそうだけど……
それとは違う、モモちゃんが無理をすることなくいられるような、そんな安心できる友達になれたらいいな、と思う。
そのためなら、ぼくの前では泣いてもいいし、時々悩んだり、沈んじゃうのも大歓迎だ。
あれ何だか矛盾してきたぞ。
思いにふけっていると、カービィとモモちゃんは既に2切れ目。あ、まずい、もたもたしてたらぼくの2切れ目がカービィにたべられちゃう!
そう思って焦ってひと皿目の残りを消化しようとすると、モモちゃんがこちらをみた。
「大丈夫ですよ。」そして、ニコリと笑う。
「ね、ぷにぷにちゃん!」
「ぱや!」
そしてフォークをもったカービィと笑顔でアイコンタクト。
この子には、かなわない。やっぱり。