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星のカービィ邪道創作(ももメタ専

もう一つのポップスター①/白き蝶の魂(ソウル)

目にした彼らの壮絶な生の前に、
こんな小さな花束などなんの慰めになろうか。
それでも私は、二人に対し、何かをせずには居られなかった。彼らのことを忘れないために。

 

パフェの味がしない。
殊更、味わわなければいけないとわかっているにも関わらずだ、
いつものように給仕がパフェを居室に持ってきた。
こんな時に、物など喉を通るはずもない。
しかし…、もうひとりの私も、こうして夜にこっそり甘味を口にして居たのだろうか、とふと思った。
黙って長柄のスプーンをとり、目の前のそれを、すくうと口に運んだ。
味がわからない。匂いも、いつもなら甘いはずのそれが。
彼女なら、一人で食べるより仲良しのカービィと二人で食べることを好むのかもしれない。
彼らは今日の夜、パフェを食べられなかった。

 

「ごめんなさい」
「ぷにぷにちゃん、ごめんね。私、何も守れなかった。強さが足りないから、強くないから私、誰も守れなかった」
斃れ、最後の力を振り絞るように、泣き噦る少女。
ピンク色の、カービィに似た色をしたもうひとりの私。追ってきた私そっくりの色をした、青いカービィに縋り、
彼女は許しを請うように泣いていた。
青いカービィは倒れた彼女を優しく抱き起こし、寄り添っていた。
私は呆然とそれを眺めていた。
彼女を剣の刃にかけたのは、この私なのだ…
そして二人は
足先からゆっくりと光る粉と化しながら、消えていった。

待て

二人が無くなってしまう寸前、私の心が騒ぎ立てたような気がした。
しかし私は何もせず、何も言わず、無言で彼らの消滅をただ眺めただけだった。

私達は勝った。勝って生存の権利を手に入れた。同時に「向こうの人々」のそれを丸ごと奪い取った。
敵、とみなした者たちも私達と同じように、自分たちの未来を得ようとしただけだった。
仲間を想い、笑い泣き、ポップスターの住人となんら変わらない人々を、私達は敵とし、根刮ぎ殺めたのだ。
私達と向こう側、二つのポップスターのうち、どちらか片方しか生き延びられない。
本当にそうだったのか。
両方とも生き延びる道があったのではないか。
答えを出すには余りに時間がなさすぎた。
私はポップスターの人々を生かすため、向こう側の者を皆殺しにする決断をした。

そしてもうひとりの私とカービィ、彼らも消えた。
しかしそれだけでは、終わらなかった。

(嗚呼)
強い衝撃と艦が揺れる音にも、私の心は動かなかった。
最も頼りにしている側近が飛んできた。
「わかっている」
私は側近を制した。居室のカーテンを開けると、漆黒の宇宙であるはずの暗闇が朝焼けの如く、鮮やかな赤と、橙に染まっていた。
(お前だな)
当たり前のように、それが理解できた。
上を向くと、白く輝く、四対の羽のようなものが遠くに見えた。
朝焼けのそれは、もうひとりの私、彼女の、色だった。
(「魂」か)

ポップスターの生物の中にも、強い生命力と強大な力を合わせ持つものは、肉体が滅びると「魂だけで蘇る」ものがいるという。
伝説の上では、かつてギャラクティック・ノヴァと融合したマルク、私が唯一目にした例は、ハルカンドラの万能の冠、マスタークラウンを手にしたマホロア、そしてあらゆる生命を取り込んだ天空の女王セクトニア。
そしてそれらはいずれも、強い悪意を持つものだった。
(お前はどうなんだ)
私は明星の空に浮かぶ、白い蝶に向かって心の中で呼びかけた。
自分たちを踏みにじり生き延びた私達を魂だけで蘇り、滅ぼそうとしているのか。
わからない。彼女は羽から静かに白い無数の糸を伸ばすだけだった。
そしてそれは、空を覆い、ポップスターを丸ごと覆いこもうとしていた。
それは悪意を持つ魂の躯とは思えなかった。
その白い輝きは、あまりに静謐で、美しかった。