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星のカービィ邪道創作(ももメタ専

もう一つのポップスター②/王と小さな騎士

「陛下」

謁見の間の赤いカーテンをくぐり抜け、
メタナイトが玉座のもとにやってきた。
「少し、お時間をいただけませんか」
「構わんよ。どうしたのだ?」
その表情は浮かない。桃色の仮面の下には、その上からすらもわかる、強い、憂いに満ちた目を浮かべていた。

「陛下、違う次元にある二つの世界(ポップスター)が一つになりつつあるのが、わたしたちの世界が消えつつある理由とすれば、もう一つの、世界をなくせば、わたしたちは生き延びられる、ということなのでしょうか」
「その可能性はある」
異次元の遺物、ハルトマンテクノロジーによりわかっている限りのことを、私は説明した。
根本的な原因は不明だが、空間に断裂が生じ、歪みの対極にあるポップスターと、我々のいるポップスターが融合を始めている。それと直近の地形や多数の集落消滅との関係が高いと。
「そうなると、向こうの世界の人たちはみんな消えてしまう、ということなんでしょうか」
「そうなるな」
「そう、ですよね」
彼女は暗く、被りをふった。

我々は、遠くないうちに重すぎる決断をしなければならない。
それは、目の前にいる少女にも突きつけられている。
奇跡的に、この星の住民の気質から大規模な国家的争いのないこの星では、彼女の私設軍だけでこの星の実効的戦力の、半分以上を占める状況なのだ。
数年前に父の急死で幼くして私設軍の当主の座を継いだ彼女は、本来であれば、遊びたい盛りの子供だというのに。
「わたしは、もう少し時間が欲しいです」
「私もだよ。だが、じっくり考えるには、時間がなさすぎる」
彼女は玉座の下で俯き、沈黙が流れた。
「あの、」
下を向き、おずおずと彼女が言った。
「本当に、向こうが滅ぶ以外、わたしたちが生き延びる方法はないのでしょうか」
「民話の上での話だが」
私は前置きした上で続けた。
「かつて、星の力を強く引き出し、人々を苦難から解き放ち、導いた聖者がいた。その死後、彼らは魂となって蘇り条理をひっくり返すような奇跡を起こした、という伝説がある」
メタナイトはばっ、と顔を上げた。
「それって…、」
「しかしあくまでそれは、お伽話だ。今の私たちは、現実を見なければならない。思いつめて、馬鹿な事を考えないようにな」
彼女には思い込みの激しいところがあるので、本気にしないように気を払った。
しかしあるのならば、
魔法にでも、奇跡にでもなんでも、縋りたい気分だ。
しかし、我々が生き延びることは何より優先されなくてはならない。そのためにはもう一つのポップスターの存在を「無くす」ことも是としなければならないのだ。
メタナイト、そなたには限りない重荷を背負わせることになるが」
「わかっています。わたしたちもこのまま、黙って滅びる気はありません。」
自分に言い聞かせるように、彼女は言った。
「どうか、何も言わず私についてきて欲しい。全ては私が為すことだ。そなたは自分を責める必要はない」
「陛下の、御心のままに」
まだ幼いメタナイトは剣を置き、跪いた。そのいじらしい姿に、我々の向き合う運命の残酷さを感じずにはいられなかった。
母なる星よ。
これが貴方の意思なのか。