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さみfulldays♪

さみ日常雑感食べたものの話

もう一つのポップスター③/「真に強き者」

 

余りにも美しく、静謐な光だった。


その魂の中央に剣を突き立てた時、去来したのは殺意でも、手応えでもなく、仄暗い絶望だった。

そして、「ごちゃ混ぜのポップスター」が出来上がった。住人と、地形と、既存の全てが異次元の世界のそれと混じり合い、新しい世界ができた。 魂の破壊がもたらした膨大なエネルギーと、奇跡によって。 奇跡とは…奇跡は、奇跡だ。 あの二人のもたらした何かだと、想像するしかない。
ソルティ・シー。 私は以前にはなかったその名の海岸に二つ、花を手向けた。 彼らは私達すべてを含む、全ての人々の咎をたった二人で背負った。 そしてかの少女は、初めから、たった一人で それを背負おうとしていたのだ…
もう一人の「大王」が生き残らなければ、私はそれを知ることもなかった。

「塩の海」を意味するその場所は、異次元から来た「もうひとりの私」が最初に果てた場所だ。私は彼女を二度、殺した。 カービィそっくりの色をした、いっぱいいっぱいで、それでいて、どこか抜けているような少女だった。 そして私そっくりの色をした、もうひとりのカービィ。昔の私と同じように人を寄せ付けない、頑な目をしていた。
消えたふたりは魂となって蘇った。
私は彼らに、二度目の引導を渡した。

「星の夢」との戦いの時と同じく、再びロボボアーマーを介して艦と融合したカービィをも伴う攻撃の末にも、「それ」は傷の一つもつかない。まるで無抵抗なのに、こちらの攻撃はまるごと吸収してしまい、何一つかわらないのだ。
カービィは消耗している。
埒があかないと判断した私は独り艦から離れ、生身で彼らの本体に近づいた。
白い羽をくぐり抜け、中央に近づくにつれて、「それ」が明らかになった。
私は当惑した。
そこには見慣れた姿があった。
(ハルバードにそっくりだ)
私は思った。
四対の巨大な蝶の羽にかこまれたような、淡く真白に輝く、
しかしあまりに羽に対して小さな、「ハルバードのようなそれ」は
本体であり、本体ですらなかった。
その上に、彼女がいた。
乗る艦(ふね)と同じように、淡く、白く光り輝く鎧をまとい、ただ静かに、そこにいた。
死装束。
私は真っ先にそれを思った。
消えたはずの彼女が蘇った。つまりはそういうことなのだ。
彼女を護る艦は、「彼」だった。
彼女がそれを私に教えた。
「最後までがんばろうね、カービィ!」
彼女は大きく手をかざし、光の羽がゆるりと羽ばたく、大きな空に向かって呼びかけた。それに応えるように巨大な羽がゆったりとなびくと、その羽から出ている無数の白い糸が密度を増した。そして私が思わず振り返り見た、ポップスターを丸ごと覆っていく。
私は「これ」が、ふたりであることを理解した。そして彼女の言葉からは、怒りや憎しみは少しも感じられなかった。
「貴様らの目的は何だ」
私は「彼女」に剣を突きつけ、聞いた。
「わからないけど」
彼女はすこし、子首をかしげた。
「ぼく達は今、ここにいる。ということは、もしかしたら、やれることはやれるんじゃないかって」
「やれる事?」
彼女の言うことに付いていけない。彼らの意図、そしてポップスターに起ころうとしている事、何もかもが理解不能だった。
「僕は、ほんとうは僕たちの世界の人も、君たちの世界の人も、みんな助かればいいのにって、そう、叶わないことだって分かっていながら、願ってたんです。
僕達のしたことからいえば、信じてもらえないでしょう。それは、最もです。
僕たちの偉い王様が、教えてくれたんです。
魂だけになった人は、奇跡をおこすことがあるって。
一度死んじゃったけど、またここにいるってことは、
きっとそうなのかなって」
彼女は明るく、はにかんだ。声がそう語っていた。
「どういう意味だ」
「どうなるか分からないけれど、もし陛下の言う奇跡というものが本当にあるのなら、僕たちで、やってみようと思います」
「力を貸して、くれますか」
「何?」
力を貸せ、とは。
両腕が、広がった。
「……まさか」
口から呟きが漏れる。

メタナイト。ぼくたちを、その剣で破壊してください。
ぼくたちはもう、戻れません。どのみち、ぼくたちがこのままでいれば、何をしだすかわかりませんし、それに、
何か奇跡というものが起こるなら、きっと今が、その時なんです!」
彼女は笑った。
かつん、と金属の音がした。剣が降りていた。
彼女に刃を向ける気持ちが完全に、失せていた………。
「私は」
思わず、声が滑り出た。

どうすればよいのだ?

喉が震えていた。
彼女は、腑抜けてしまった私の言葉にならない問いに答えた。

メタナイト。これは君にしか頼めません。こうするのがいいって、なんとなくだけど、そんな気がするから。これは、君にしかできないから。これは、ぼくの勘です」
そう茶目っ気たっぷりに言う様は、余りに浮世離れしていた。まるで陽気な春の日に、いまから散歩にでもいこうというような口調ではないか。
「あ、いま不安だって思ったでしょう?
でもぼくの勘は案外よく、当たるんですよ?」
確かに。彼女の「勘」にしてやられ、
私は顎を蹴られ、重症を負ったな。
敵同士のはずなのに。私は今の彼女の言葉に思い出話のような余韻すら覚えている。私は。
彼らをまた、殺すのか?殺さねばならないのか?

そして、彼女は笑った。
「また会えたらいいなあって、思ってる」


今度は君のこと、もっと沢山知りたいです。
できたら、友達になれたらいいなあ、
…なんてね。

 

すべてが終わり、わたしは独り浮遊する、真っ平らなアステロイドの岩の上に取り残された。
耳には、その身に突き立てた剣を通して強制的に伝わった、彼らの音にならない「最期の言葉」、その残響が、いつまでも響きつづける。

 

だいすきよ、だいすきよ、カービィ

ぼくたちは、これからもずっといっしょだよ。

うん、ずっといっしょにいられるわ。これからもよろしくね、カービィ

ぼくもきみがだいすきだよ、メタリー!やっと、きみにいえたよ。
もっとはやく、ちゃんといっておけばよかったな。

いいの。
これからはずっと、いっしょだから。

そうだね。ずっと、いっしょだ。
こういうの、すこしてれるけど、ぼくはいま、すごくしあわせだよ。
だって、だれよりもかわいくてしかたがない、きみがそばにいるんだから。

わたしもよ、カービィ。うれしくて、どきどきして、でもちょっとなきそうなの。


わたしたち、もうはなれないわ。

 

……………………

 

「そんな」
何という。なんて馬鹿な。
「私がより強い力を得た、そのために努力をしてきた、その帰結がこれか」
「なんて、馬鹿な………!!!」
ギャラクシアを無造作に突き立て、私は脱力した。
蝶と、白い糸は消えていた。
私の頭と体は、もう動くことを一切拒んでいた。
少なくとも、今の私にあったのは、安堵や、勝利の余韻などではなかった。
もっと酷い、「耐え難い何か」だ。
耐え難い何かは、口を通して、私の中から出た。とても他人には聞かせられない、苦く、情けなさすぎる声だった。

二人の、「もう1人の私達」の存在は
私に、しつこい爪痕を残した。
私は、今まで求めていた「強さ」について、疑問をもたなかった。だけど、本当に私が求めるのはそれなのか、
わからなくなってしまった。

今までの私が求めていたのは、強者を打ち負かす力だけだった。私はただでさえ困難な敵で、「魂化」で、強大になった彼女の魂を、この手で砕いた。
しかし、それを成しえたはずなのに、虚しさしか残っていない。

元は脅威であった「あれ」は元は年端も行かない、年相応の無邪気さを残した、ただの子供たちだったのだ…
今のまま剣の道を極め、戦う力が強くなることも必要には違いない。
だけどそう、「強くなったとしても、」それだけで、私には何が出来るのだろう?

以前私は「より強い、戦う力を得ることで私にとって大切なものを、この愛する星と世界を守ることが出来る」という結論に至った、しかし…

それすらも、できなかった。
彼女や彼の笑顔一つ、守れなかった。
この世界を、二つの世界を救ったのは彼らだ。
私はなにもしていない。

私は凡ゆる武器や術、火器までもを駆使し、なりふり構わず戦う彼女を「似非物」と罵った。 それを心の底から後悔している。

「もし、あの時」彼女の決意を知っていれば。

「もし、あの時」彼女の苦しみを共有できていれば。

彼女も、彼も救えたかもしれない。共に生きることができたかもしれない。 そう「もし」と願うことしかできないくらい、 私はあまりにも、無力だ。無力だった。
威圧すらしてくる、刺々しいオレンジ色の夕日に染まりながら、君だけでも生き延びて、と仲間を救えなかったことを、友に詫びながら涙する彼女の顔も、そして宇宙(そら)の上で、両腕を広げるその姿も、脳裏にこびり付いて離れない。私は、彼女の姿を、二人の生々しい「生き様」を目の当たりにして、今まで描いていたのとは違う、「強さ」を
新しく知ったのだ。
斃れた彼女は「力のないこと」を嘆き、それを切望していた。
私には、ほんのわずか、彼女よりもそれがあった。しかし、
彼らはそんなことなど何にもかからないくらいの「強さ」を持っていた。

自らの犠牲をも厭わず、敵をも憎まず、
自らの眷属でもないあらゆる星の人々をただ純粋に想い、生かそうと、
彼らが決意を持ってそれを成し遂げたのは、
彼らの仲間たちへの、そして互いへの想いがそれほど、深い故だったに違いない。
そしてその想いは突き抜けて、私たちにまでも降りかかった。 それに言葉があるのだとしたら、紛れもなく、『愛』と呼ぶのだろう。
そしてその愛こそが、彼らの「強さ」だった。 自らの犠牲をも厭わぬ、存在を違えるものをも憎まぬ、高潔な愛。

今の私には、ない強さ。

私は彼らのように「強く愛する」ことが
できるのだろうか? 今は、答えが出ない。ただ。
もしまたいつか、どこかで会うことができるのなら、
今度は君達の、名前が知りたい。
私はメルヴィン。メルヴィン・マイカ・メタナイト

私は無言で、オレンジオーシャン、彼らの世界ではマンダリンマリーンと呼ばれた橙の日に染まる、白い花束二つに手を合わせた。