さみfulldays♪

さみ日常雑感食べたものの話

※青桃メタ(内縁ネタ

 めっちゃひとえらぶ

(というか読む側で得する人がいるきがしない)

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「メタリア」
ある日、兄さんがぼくを呼んだ。
「急ぐ必要はない。時間が空いたら、私の所へ来てくれ」
今からの新兵の訓練が終わったら、時間が開くな。
ぼくはその旨と、後で兄さんの執務室に行くことを伝えた。

言われた通りに行くと、兄上は来たか、といい執務用の大振りなデスクから立ちあがった。
デスクからだいぶ離れた部屋の真ん中あたりにホルターに着せた白いドレスが飾ってあった。いわゆる、ウエディングドレスだ。
これをぼくに見せたかったのかな?
でも、なぜ?

兄上は横を向き、ドレスを着せてあるホルターから少し離れた位置に立っていた。そしてぼくの方を向いて、言った。
「今から、私の為にそれを着てくれないか」

ぼくは自分でわかるくらい、ハトがマメでっぽうを喰らった顔になった。それを見て、兄上は少し自信なさげに言った。

「無理にとは言わない」

なぜ兄上が、花嫁さんに着せるドレスをぼくに着せたがるのかはわからないけど、兄上がぼくがこのドレスを着ているのを見たいと言うなら、特に断る理由もなかった。
実を言うと、一度着てみたかったのも、正直な気持ちだった。
スージーのウエディングドレス姿は、ほんとうにキレイだったから。
作った自分がいうのもなんだけど、スージーのなだらかな躰の線を引き立てる、ほんとうにキレイで、美しい花嫁さんだった。
ぼくもあんな風になれるのかなあ?
ぼくは当時、そう思ったものだ。

それから、いろいろとおかしくなった。
まずスージーが、突然兄さんとの婚約を解消(結果的には話し合いの末だけど、それがなければ実質「破棄」)した。
残された兄さんはスージーの幸せをねがい、優しく見送ったけど、情緒不安定になった。
兄さんはその後、修行の旅に出て、その間にポップスターに異変が起きてぷにぷにちゃんも行方不明になり、結局、ぼくも兄さんと星一周マラソンをすることになった。
異変は解決して、兄さんは修行の旅を再開したけど、ぼくも兄さんが星を回り終わるまでなんとなく兄さんの後を追って、一緒に行くことにした。
心配というよりは、事件解決の旅も済んで、このまま一度別れるのも寂しいので、単に家に着くまではこのまま一緒にいたかっただけだけなのかもしれなかった。
その間に、ぼくたちはある夜成り行きで、互いに傷ついた状態を癒そうと、トマトをくちうつしで食べたことがきっかけで、そのまま……(兄さんは、「ヒーリング」を使いたがらなかった。「修行」のためだろうか)いわゆる、「できちゃった」状態になってしまい、その後も旅の間何度も「成り行き」を繰り返した結果、ぼくは本当に兄さんの子供を孕んでしまった。
どのみち、兄さんの跡取りは必要なので、それは形の上では解決した……のだけど。
それからのぼくは、スージーの代わりになった。兄さんの人に見せられない、脆い部分を受け止め、時に癒す、ぼくはそういう役目になった。
ぼくは兄さんの事が好きだけど、スージーと兄さんの間柄みたいに、「熱愛」したいわけでもないし、「成り行き」なのだから、このまるっこい体が兄さんの役に立つなら、それでもいいのかな、と考えるようにしていた。
惑星メックアイにいた時に見た、騎士相手の「娼婦」みたいだなあ……って、自嘲した時もあったけど。
そして、ぼくは一つの恋を終わらせた。
兄さんとそっくりで、でも兄さんとはちがう、かわいいあのこ。
今も会う友だちだけど、もう、こっそり家を抜け出して、一緒にお花畑や森で遊ぶことは、しなくなっている。

一人目の息子、アンリを産んでからは、そんなことなど気にしている場合ではなくなった。「お母さん」になったのだから。母親の役目と、幹部の役目をこなしながら、二人目の娘アンナも生まれ、それからはその繰り返しだ。それに不満はない、どころか今はとても幸せだ。
ふたりの子供たちはかわいいし、みんなとも上手くやっている。新兵の教育という役目を与えられてからは、苦闘しながらもぼくはとても満たされている。
でも、兄さんとはこれまで通り兄と妹だ。兄さんの子供を生んだとはいえ、ぼくは「その役割だった」のであって、決して「お嫁さん」ではない。それは兄さんもそう考えているだろう。兄さんが真剣に恋をしたのは、スージーだけだった。

でも、ぼくにはドレスを着るのに、どこか納得していた。昨晩のことだった。
いつものように兄さんの寝室にいた時だ。ふと兄さんが言った。
「お前も、この年なら、私があんな事にならなければ」
「今頃は何処かに嫁いでいたのかもしれないな」
潤んだ金色の眼の光。哀しそうな顔だった。
ぼくは笑った。そんなことはどうでもいいから。
「そんなこと、今まで考えたこともなかったです。子供たちもいて、みんなもいて、ぼくは、とても幸せだから」
「いや」兄さんは首を振った。
「私はお前に甘えて、お前を拘束してしまった。お前の人生を、めちゃくちゃにしてしまった」
兄さんはぼくの肩口に顔を埋めた。
そして、肩が熱く濡れた。泣いているのだ。あの、兄さんが。
「許してくれ」
兄さんが押し殺した声で呟いた。体も、羽も、震えている。
ぼくは兄さんが急に愛おしくなって、兄さんの震えを止めるように、優しく抱きしめた。今までにない想いだった。少し、手に力が篭っていたかもしれない。
めちゃくちゃにされたなんて、ぼくはかけらも思っていない。始めは、成り行きだったかもしれない。アンリが生まれたこともその結果だったのかもしれない。でもぼくは、望んでその役目を選んだ。恋をあきらめたことも。兄さんに「そうさせられた」んじゃなくて、ぼくが決めたことなんだ。
でも兄さんは、いままでずっと
独りで苦しんでいたんだ……ぼくの人生を滅茶苦茶にしたのかもしれないって。
兄さんはやっぱり、優しい。
そんな優しさが、脆くて、危うく見えた。そしてそんな弱さを見せてくれるところがとても切なくて……愛しい。

「兄上、むかしも今も」
「ぼくは兄上と共にいます」
ぼくは兄さんの背中を何度も撫でた。
「だから、迷わないでください」
「ぼくは迷ったことなんて、ないんですから」
上手く、伝わったかはわからないけど。
それからはぼくの体に顔をうずめる、兄さんの背中をただ撫で続けた。そしてそうしている間に、ぼくはいつしか、眠ってしまった。

そんなことを思い返しながら白いリボンを頭に付け、ドレスを着て、着替えをしていた書斎の入口から出た。

兄さんはぼくを見ている。そして言った。
「ああ、メタリア」

「なんて美しいんだ」
普段は聞くことのない、熱っぽい声だった。気のせいか、仮面から零れる瞳がいつもより、光輝いているように見えた。
美しい、なんて始めて言われた。
「かわいい」は昔からよく言われたけれど、「美しい」とはスージーの為にある言葉だと思っていた。だからちょっと、信じられなかった。拍子抜けしたというか。

「もっとよく、見せて欲しい」
兄さんがぼくに近づいてきて、透けるレースの手袋をした両手を取った。そして顔をものすごく近づけてくる。
「やぁだ兄上、そんなに近づかれたら、は、恥ずかしいのです!」
ぼくはダイレクトに精悍な仮面の顔が近づくのに顔が真っ赤になってしまい、すこし首をすくめて距離をとった。

「そうだ」
「二人にも、お前のその姿を見てもらいたい」
二人、僕が言ったその声に、
兄上が執務室の入口に顔を向けると、
息子と娘が部屋にいることに気がついた。

「お母さま!」
娘のアンナが無邪気に駆け寄ってくる。ぼくはそんな娘を力いっぱい抱きしめた。

息子のアンリは固まったまま動かない。照れ屋さんなのだ。
「いらっしゃい、アンリ」
アンリに手を差し出し、アンナと同じように来るように促す。彼はきっかけができたことで照れを払拭できたのか、淡々と歩いて近づいてきたので、ぼくは彼も捕まえるようにして抱き込んだ。
「お母さま、きれい、すごくきれい、花嫁さんみたい!」
「ありがとう」
ぼくは嬉しくなって、アンナの額にキスをした。ついでにアンリの仮面から覗いた頬にも。彼はいやそうではなかったけれど、怯んで、首を少しすくめた。
「兄上」
ぼくは二人を抱きしめながら、兄さんの方を見た。
「いや、私は…」
兄さんは頬に手をやりながらすこし横を向いたが、やがて唐突に言った。
「家族の写真を撮ろう。四人で」

「そういえば、結婚式の時以来、写真は撮ってなかったですね」
あの時のドタバタ。それ以来なんとなく、ぼくと兄さんの写真は撮ってなかった。でも、それって、ウエディングドレス姿のぼくも映るってこと?
それじゃあまるで、

僕がそのことを兄さんに言おうとしたその時、いつの間にかメタナイツ(と水平帽子のワドルディ)までが部屋にいることに気がついた。

「彼らにも、見ておいて貰おうと思ってな」
「あのー……」
ついに、ぼくは呆気にとられてしまった。

兄上が笑う。
微笑ましそうに笑うナイトも、やや興奮気味でまくし立てるナイトも、口ぐちにぼくのドレス姿を褒めてくれたので、ぼくは照れながらも彼らに礼を言った。

「はい撮るダスよー、一たす一はー?」
にー!と笑いそうになったところで、
カメラマン役で、彼と仲のいいジャベリンナイトが冷静につっこむ。
「メイスナイト、真面目にやれ」
しかもお前カメラマンじゃないだろう。
まあいいじゃないダスか、盛り上げ役ダス、盛り上げ役〜!
メイスのひょうきんさは時に、雰囲気が沈んだり緊張したときの清涼剤になる。
時に調子に乗ってふざけすぎるのも愛嬌だろう。ぼくも、人のことは言えないし。今は、ガチガチになりそうな雰囲気が和らいでいるし、むしろジャベリンとのコンビでぼくもアンナも(アンリは我慢している)笑わされている。

家族の写真、か。それなら。
昔から苦楽を共にしている彼らもほぼ同じようなものじゃない?
と、ぼくは考えた。そしてカメラマン交代でメタナイツまで入れた写真撮影までどさくさに紛れて始めてしまった。兄さんは呆れていたが、一緒に写真に収まってくれた。

今でも、ぼくは兄さんの「お嫁さん」にはなったのかはわからないけれど、
息子と娘も含めて、四人では今までとは違う「家族」になったのかな、
そう思っている。
兄さんとぼくの部屋には、それぞれちゃんと四人で撮った写真が飾ってある。
兄さんは生真面目な写真で、ぼくはすこしおどけた写真を。
写真は違っても、きっとぼくたちが「家族」なのは、同じだろう。