momogenics!🍎🥧

星のカービィ邪道創作(ももメタ専

モモクス?


デデデグランプリ、ゴールドリーグ決勝戦の試合が終了した。
デデデコロシアムの観客席にいた、赤い肩当にピンク色の靴を履いた「ピンク色のメタナイト」が、帰りゆく観客の合間を縫って、観戦席の一番前へと人をかき分けて降りてゆく。
カービィワドルディメタナイト、アックスナイトでのチーム戦は、カービィ側に軍配があがった。複数競技でのラスト、バトルロイヤルで決着が付いたあと、地面に頭から埋まぬった二人を助け起こすべく、彼女はコロシアム最前列のフェンスを乗り越え、桃色の羽を広げるとふわりと闘技場の中へと降り立った。そして先に、アックスナイトのばたばた動く赤い足を持ち上げ、後ろから勢いよく引きぬいた。
ぷはあっ、と息をさせ、引っこ抜かれると同時にアックスナイトが後方にころがる。翼で後に回ったメタリアが彼を支えた。
やはり激戦の後、ひどい傷だ。ランスや爆撃にやられて甲も体もボロボロになつている。全身に擦傷や大きな切り傷が数え切れないくらいにつき、血があちこちに滲んでいた。
「アックス、大丈夫?」
メタリアが心配そうに問いかけると、アックスナイトは顔を伏せた。
「申し訳ありません。メタナイト様の足を、引っ張ってしまいました…」
メタリアは首を振った。
「いいえ、君は立派に兄上の伴侶を務めましたよ」
「しかし、カービィに負けてしまっては何も意味がありません」
「確かに勝つのもいいことです。だけど、それ以上に二人とも、ずっと堂々としていて、かっこよかったのです!執拗にカービィたちを追い詰めて、最後までどっちが勝つかみんなわからなかったのですよ!さっき、わどわどちゃんが上げた脚のそばをギュンっ!て手斧が掠めた時とか、僕までヒヤッとしちゃいました。兄上も君も、すごくステキだったのです!」
「恐れいります…」
背を崩したまま、アックスナイトは照れくさそうに頭をかいた。
「じゃ、手当をしましょう。すこし、目を閉じていてくださいね」
言われるまま、目を閉じるアックスナイトであったが、ふと気配を感じると、目を開けた。そして思わずのけぞった。
そこには、上気した頬。艶やかで血色の良い桜色の肌に、伏せられた長い睫毛。そして小さな唇を愛らしく尖らせたメタリアの顔が眼前にあったからだ。
「メッ、メタリア様!!何を!!!!!」
「なにって?『くちうつし』ですよ?」
「いっ、いけません!!」
アックスナイトは両手でメタリアを押しのけた。
「なぜです?怪我の手当をしなければ。」
「なりません…私が、メタリア様に、『癒される』など!!」
アックスナイトの顔は、マスクの上からでも露骨にわかるほど真っ赤になっていた。
「でも、ひどい怪我です、痛いでしょう?さあ。」
「とにかく、なりません!絶対になりませんぞおぉぉぉぉ~!!!!」
アックスナイトはそう叫ぶと立ち上がり、脱兎のごとく闘技場の入口へと走り出して行った。
「アックス!逃げなくてもいいではありませんかー!!」

「…そうなのです」
そしてもう1人、埋まっていたメタナイトを助け出すと、先程の出来事を話し始めた。
メタリアは露骨に沈んでいた。
「アックス、ぼくにくちうつしされるのが嫌だったのですね。悪いことをしてしまいました」
メタリアはあくまで友人達同士でもよくやる「手当」をしようとしたのだが、それを自分にされるのが嫌な人もいるのだと。それに全く気がついていなかったことが申し訳なく思えた。
もしかしたら、友達の中にもぼくと「くちうつし」するのがいやな子もいたのかも、と取り返しのつかないような思いがよぎった。

「…いや」
メタナイトは首を振った。
「アックスナイトはお前が嫌だったのではないだろう」
メタリアはわからない、という表情をした。
「じゃあ、どうしてぼくから全速力で逃げたりしたのですか?」
「ふん…」
メタナイトは少し首を捻り、メタリアの方を見て、言った。

「彼は、『紳士』だからな」
「????????」
ますますわからない、という顔で小首を傾げたメタリアに、
メタナイトはフッと笑った。
「彼は女性に奥手なんだ。少々、加減してやってくれ。」
「ぼく、女の子なんでしょうか?」
「大抵はそう思うだろう」

本人に自覚はないようだが、最近の彼女には、少女からすこし背伸びをした色香が出ているように思う。

アックスが「女性」と認識してしまうのも無理はないな…と少し、彼の反応が腑に落ちた。
「わかりました。くちうつしでなければいいのですね。ありがとう兄上!」
そういうと手を振り、メタリアも闘技場への入り口へと駆け出していった。
「私はギャラクシアがあるから…か?」
確かに自分で自分を癒せるメタナイトにはそうなのだが、自分はアックスに押されその場に完全放置されたことをメタナイトは少し複雑に、寂しく思うのだった。
なお、メタリアがアックスナイトに栄養ドリンクを渡した後に、兄の事を思い出すのは大分後のことであった。