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さみfulldays♪

さみ日常雑感食べたものの話

「あのこがいない」

星のカービィ

 

きょうも、あのこはいない。
前はデデデの城に遊びに来る度にいつもいたのに、ある日、いなくなってしまった。

最初のうち、彼女のゆくえを聞くと、ワドルディは言っていた。
「モモちゃんはお家に帰ったんだよ。」
「病気になったんだって。でも、きっと帰ってくるよ!モモちゃんだもん!」

でも、いくら待っても帰ってこない。
気がついたら、雪がふってて、春になって、夏が来て、秋が来て、また雪が降りはじめた。
今日もカービィはあの子を探す。
いないのはわかってる、なんて思わない。
「あしたはあしたのかぜがふく」
それが彼の座右の銘だ。昨日いなくても、今日はいるかも。今日いなくても、明日はいるかも!
デデデ城に来る度、彼はそう考えるのだ。そして今日は、ワドルディたちやその子と、何をして遊ぶか考えているのだ。

そして、今日も、城のどこにもいなかった。

そのうち、ワドルディは「その話はもうしないで」というようになった。
それでも尋ねると、
「もういいってば!もう、その話はききたくないよ!」
そう、怒り出すようになってしまった。

デデデだいおうも「わからない」っていうし、
ワドルディはモモがきらいになったのかな?
どうしてきらいになったんだろう?きゅうにいなくなったから?
どうして、だれもモモがどこにいるかしらないし、さがしにもいかないんだろう?
おかしいよ。
ぼくはモモがすきだから、ここにいないのならさがしにいく。でもどこへ?
……そうだ、モモのおにいさんのメタナイトなら、モモがどこにいるかしってる!
ぜったいにしってるはず!

厚い、黒い雲がたちこめていた。
クラッコでも出てきそうだ。
メタナイトが拠点にしている場所を、カービィは知らなかったが、どうやら彼を、星そのものの力がその場所へと導いているようだった。
城を出てからひたすら走り、歩いた。
メタナイトがいる気がする」、ただそれだけで、彼はメタナイトの元にたどり着いたのだ。

そして彼はいた。切り立った、草の満ちた、崖の先。
厚く重い雲に目を寄せ、彼はマントを硬く閉じて立っていた。
「ぽよ!」
聞き覚えのある声。
彼は黒い空を背にし、振り返った。
「貴様か。…何用だ。」
彼は呟くように言った。頑なながらも、その声に敵意は感じられなかった。
「…ぽ、ぽよぅ」
「何だ」
カービィはなにかを戸惑うようにおずおずと尋ねる。
戦艦の中で自分と対峙した、あの剣呑で、強い意思を宿し自分を見上げる、記憶の中のあの顔からは、とても考えられない姿だった。
カービィは更に自分とメタナイトを丸い手で交互に指し、何事かを訴えようとした。
「ぱゆ!ぱゆぅ!」
「何を言っているのかわからない」
「ぱゆ、ぱゆぇ……モ、」
「モモ」
彼の口は、はっきりとそう言った。
「モモ……か」
「私の妹は死んだ。もういない。」
彼は容赦なく、カービィに事実を告げた。
「わたしの妹が生きていた時、世話にな……、妹とは、友達でいてくれたそうだな。
彼女もきっと、君と友達でいて、幸せだったと思う。」
「ありがとう、カービィ
「ぽよぉ……」
カービィは悲しげに、メタナイトを見やった。
「また会おう、カービィ
メタナイトは厚雲の空に向き直り、元の姿に戻った。
それきり彼は、動くことは無かった。

メタナイトは「モモは、もういない」といった。
だけどメタナイトは、モモをさがしてそういってるのかな?
モモ、いったいどこにいるんだろう?ポップスターのどこかで、かくれんぼしてるのかな?それとも、メタナイトみたいに「しゅぎょうのたび」に出ていて、いまはとおくにいるけど、きっといつかかえってくるんだ。
だけど、メタナイトは……

「もう会えない」

ついに彼も、そのことを理解してしまった。
彼は身をもって知っている。
「いなくなる」のがどういうことか。
モモは、「きえちゃった」んだ。
涙が溢れ出した。
モモにはもう会えない。
だって、「きえちゃった」から。
声を聞くことも、顔を見ることも、一緒に遊んだり、おやつを食べたり、カラオケもできない。
でもそんなことより。
モモが自分のそばに、いない。とにかく、それが悲しくて、悲しくて、辛くて、仕方がない。モモに会えない。これからも、ずっと。いつまでも。モモはもう、ちかくに、いない。ずうっと。
モモ。あいたいよ。モモがおしろにいないとさびしいよ。モモ。

こんな事は、始めてかもしれない。
カービィの泣き声がカラフルな、城の通路に響き渡っている。
それはただ通路に反響し、木霊するだけだった。モモとカラオケしたときは、城が全壊したというのに。
いつしか、ワドルディも柱の陰に隠れて泣いていた。
体を震わせて、彼女のいない苦しみに耐えていた。

「クソッ」
彼は知らずうちに、彼らしくない、また騎士らしくない、悪態をついていた。
カービィが去った後、凄まじく、カミナリが鳴り始めた。クラッコ一族が今日はとても、元気なのだろう。
一族に伝わる遺伝の病。限られた者に発病し、まず助からない。
少なくとも彼らの持つ、あるいはこの星の科学水準では、彼女を救う方法はなかった。
医療水準の高い、別の星に妹を預けるか……それも考えた。
しかし彼女は泣いて、それを拒否した。
「絶対にイヤ」と。
「お兄様、お願い。助からなくたっていい。どうか、わたしを、ひとりぼっちにしないで」
自分のマントにしがみつき、号泣する彼女に、更に過酷な仕打ちなど、できなかった。
彼女はある日死んだ。「体調がいい」と水兵帽のワドルディを連れて庭園に散歩に出かけ、その奥にある青い草と白い花の上に横になった。そしてそこで眠り、それきり、目を覚ますことはなかった。
何をしたとしても、きっと後悔しか出てくるまい。
だが、彼女にとっては、救いになるのだろうか。
白い雲が伸びる晴れやかな青い空の下、白い、名も無きやわらかな花の中に桃色のはかない羽を伸ばし、安らかに横たわる彼女は、
この星の大地に、「祝福」すらされているようだったのだ……
愛するポップスターの大地で彼女は眠り、
星の大地に命を抱かれながら、彼女は逝ったのだ。
アックスナイトの急を告げる険しい声と、帽子を取り、号泣しながらそれを告げるワドルディにより、彼はそれを知った。

「お兄様、おねがいがあります」
もう見る陰もない、弱々しい姿でベッドに横たわりながら、彼女は言った。
「何だ。アイスクリームが食べたいのか」
少しだけ、穏やかな口調でいう兄に、メアリリーは微笑を浮かべた。
「はい。アイスクリームも食べたいのですけど、その前に」
「ぼくがいなくなったら、みんなに、この手紙をとどけてください」
一つ一つに可愛らしい小鳥や、花の絵が書かれた手作りのシールがしてある。たくさんの封筒の束。失われてゆく体の力を振り絞り、彼女はずっと、友人達に向けて手紙を書き続けていたのだ。
「それから、もうひとつ」
メアリリーは両手で兄の片の手を包んだ。
「どうかプププランドのみんなと、仲良くしてください。いろんな子がいるけど、みんな、やさしくて、いい子達ばかりです。そして兄上は賢くて、強く、優しいお方です。本当は、プププランドの人々を心配する優しい兄上はみんなと、力を合わせることができるお人です。ぼくはそう信じています」
彼女の願い。
自分がプププランドの住人を傷つけることを厭い、自らの命を投げ出してまで自分を止めようとした妹。
怒りで自分を追いかけてきた彼女を突き放したとき、彼女は言った。
「力でみんなを抑えなくても、兄上には、みんなを導いてゆく力があります。ぼくは兄上が、ほんとうはみんなの事を考える、やさしい人だと知っています。兄上と、生まれた時からずっと一緒にいたぼくですから」
その言葉を忘れたら、今度こそ彼女は、本当に「死んでしまう」。
命を賭して、妹は、自分に考え、やり直す機会をくれたのだ。
雨に撃たれた体は、ただひたすらに、冷たい。だけど心は、煮えたぎった岩流のように、熱かった。

それから幾重かたった時、青い快晴の空の日。カービィが気まぐれにデデデ城にいくと、自分に手紙がきたと、バンダナのワドルディが渡してくれた。

大きな星のシールが貼ってあった。
開くと丸っこい文字。
「ぷにぷにちゃん。
またみんなで、カラオケしましょう。それから、おやつをたべましょうね!」
「ぽよよーい!」
カービィの目が見開かれ、きらきらと輝いた。開いた封筒と便箋を掲げると、ぴょんぴょんと、大きなスキップをしてどこまでもつづく草原と丘の方に向かっていった。
やっぱり、モモはいる!
おてがみがきたんだもの!
いまはあえなくても、とおいところにいても、またいつかあえる!
だから、ぼくはまいにちゴハンをたべて、おひるねしながら、モモがかえってくるのをずっとまってるよ。

そしてメアリリーからの最期の手紙を受け取った仲良しのワドルディは、そっとその手紙を封筒にしまい、大事そうに抱きしめた。
「わどわどちゃん。
元気になったら、またきみにあいたいです。今度は、デートをしましょうね。
ぼくは、うーんと、おめかししちゃいますから!」
便箋には、白いリボンとドレスでおめかしをしたピンク色の丸い女の子と、赤い大きなマントを纏った、ワドルディの絵が描かれていた。