momogenics!🍎🥧

星のカービィ邪道創作(ももメタ専

I love you

(この星の生物は死んでも皮一つ残さないが、代わりに魂を残すという。私はそれを、信じざるを得ない。)


彼女は魂と化してもなお、微笑んでいた。

私の眼の前で、巨大な閃光の中に彼女が消えた。
「星の夢」の最後の悪足掻き。
それから私を逃すように、マスターである彼女が横面に体当たりしてきた。私は閃光から逃れ、彼女の身体は跡形もなく消失していた。
何が起きたかも整理できず、「星の夢」だった無数の瓦礫の中で呆然と棒立ちになるしかなかった。

頭の中で演算だけが繰り返され、どれほどそうしていたかはわからない。
突然、「声」が聞こえてきた。
ありえない、消えた筈の彼女の声だった。そうではない、頭の中に、直接、彼女の声が響いてきた。
「メタくん、」
「メタくん、聞こえる?」
視界が声と共に徐々に真白に閉じられた少し先、私の知る彼女がいた…
「無事でよかった」
馬鹿な。
量産サイボーグでしかない私を助け、マスターである自分が犠牲になるとは。
「ぼくはもう、ポップスターには戻れないけど…君となら話ができると思って」
今までとりとめなく話をした時の様に、目の前の少女は、すこし照れくさそうにはにかんでいる。
マスター。なんという事を。
主を守るのは私の役目だというのに、なぜ私などを!
「ありがとう、メタくん。君が力を貸してくれたおかげで星の夢を破壊でき、父上の魂も、悪い夢から解放されました…ですがぼくが今案じているのは、もう、これからポップスターを守ってゆく人がいないことなのです。
だから、君にお願いしたい事があるのです。ぼくの代わりに、ぼくの大好きなポップスターと、そこに住まう、ぼくの大好きな人たちを守って欲しいのです。」
マスター。何ということだ、貴方はなぜ今尚優しく、笑っているのですか!なぜ冷静に、私に後を託そうとしているのですか!貴方自身が、取り返しのつかない事になってしまったというのに!
私の狂騒をどこかへ飛ばしてしまうかのように、彼女が私を鼓舞した。
「君ならできる。父上の魂を受け継ぐ君なら!」

「頼みましたよ…」
いつものような、明るい笑顔のまま、彼女は消えた。

「メタリア」
気がつくと、彼女の名を呼んでいた。
星の夢のコア破壊を確認、マスターは死亡。
それが、私が唯一、口に出せた言葉だった。

それからの私は、彼女の名と名誉を引き継いで、彼女の故郷の星で生きている。
そして、私のオリジナルの故郷でもある。

彼女は「生きている」。
私はあるときから、彼女の存在を濃厚に感じ取っていた。
彼女は、常に私の側にいる。しかし、私の呼びかけには決して応えない。彼女は眠っているのだ、同胞たちと共に。
保存用の初期ロットであった私は、メタナイトメアネットワークからは隔絶されていた筈。だから彼女の影響も受けず眠りにもつかなかった筈なのだが、
彼女と魂で触れ合ったからなのか、ネットワークの全ての情報を読み取れるようになっていた。

彼女は死して尚、魂を遺し星の夢の残骸へと宿った。
そしてメタナイトメアネットワークを通じて我らの存在を丸ごと無力化、星の夢の傀儡たるスージークローンが再び我らを生み出そうとしても、胚が生まれてくるのを拒んでいるかのように不活性化してしまう。

彼女となまじ繋がっているからこそ、永久に喪われたものの存在が日に日に重くなっている。たった4日間の、ふたりだけの戦争。
それが今なお私の知る唯一の、安らかな記憶であるとは。

起動時と比較して、私は明確に変化した。
彼女の声を聴くと、元気が出る。
彼女が、私を励ましてくれる事を知っているから。
彼女の笑顔を見ると、心が躍る。
彼女の笑顔は、閉塞した状況に活路をもたらす事を知っているから。
彼女の涙は、悲しみと、そして同胞への愛おしさをもたらす。
彼女が父のみならず、我らの為に泣いている事を知ったから。
彼女の私への振る舞いが、その存在が、私に感情を湧き起こす事、そして現すことを教えたのだ。
そして、今は彼女に魂を委ねる同胞たちにも、彼女の想いは伝わったのだろう。ネットワークを介して。

メタリア。
もし願いが叶うのならば、
私は君にもう一度逢いたい。
だが、それは許されない事だ。もしそれが叶ってしまえば同胞たちの眠りを解いてしまう。君が最も嘆いていた、
君の父の生ける兵器転用-つまり我らの再来-が再び起こってしまう。
この結末は君が望んだこと。それでも、
私はそれを認める訳にはいかない。
唯一君の事を知っている私が居なくなれば、君の魂は永久にネットワークの中に固定されてしまう。
それは私にとって君から引き継いだ、騎士の心を失うこと以上におぞましい事で、あってはならない事実なのだ。

メタリア。
君だけは助ける。
マスター、あなたの遺志に背くと解っていても。
本当に私が救いたいのは、私自身の魂だと知っていても。

解っている。
私は明らかに狂っている。
彼女への個人的な、考えるたびに胸を抉り取られるような深い、そして過去を掘り起こす度に響く甘い感情は、私が彼女の言う通り、「人」であるならば、
それは「愛」と現してよいものなのだろう。

あの男が「愛」によって、災厄と滅びをもたらした前例を見ているというのに、
私は彼と同じく自らの欲望を優先させようと硬く決意している。それでも、
マスター、私は、

私の為そうとしていることが、必ずや貴方に救いをもたらすと信じています。

マスター。


メタリア。

私は、君を愛している。


(時期詳細不明、不正なアクセス元からのメタナイトメアネットワーク内の記録)

 

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・私個人は、愛が無条件で素晴らしいものとは思ってません。
突き詰めると欲望の一種にしかすぎないと考えてます。割と冷めてるかもしれません。
・直接、はエグゼクティブプロデューサーさんへのリスペクトゥ!だよ!!
あれだけはぶったぎれなかったわ(メタGOEDでの話)