momogenics!🍎🥧

星のカービィ邪道創作(ももメタ専

郷愁(星のカービィ)


「スザンナ」
彼女は本名でスージーを呼んだ。
「兄さんのこと、頼みましたよ」

危機が去り、結婚式も終わり、彼女は再びここを出ていく。ようやくこの邪魔なモモメタともおさらばだ。
メタナイトはアタシだけのものになる。

しかしスージーの胸には一つの寂寥感が流れていた。
なぜ彼女はこんなに晴れやかな笑顔をしているのだろう?
血の繋がった、実の家族と分かれるというのに?
それは彼女の口から聞いた。
メタナイトは「そうだ」と言ったきり、彼女について話すことはなかった。

「アンタ、ほんとに嬉しそうね」
父を失ったスージーは当てつけるように、意地悪く言った。
彼女は動じなかった。
「私は新しい家族をみつけたの。そして私と兄さんが家族でいる期間は終わった。」
「あなたが兄さんの、新しい家族よ」
彼女はスージーの両手を柔らかく、優しく握った。振り払いたかった。

「どうか二人共、幸せになって」
彼女は柔和な笑顔で言った。

スージーはこの女を今すぐ殴りとばしてやりたいくらいの怒りに駆られていた。
こんなヤツ、何処にでも行ってしまえばいい。二度とここの門は跨がせない。

彼女もそれに応えていた。
清々する。これでこの二人ともサヨナラだ。二度とここの門を跨ぐこともない。

上部だけの優しい言葉の飛び交う、激しい憎しみの篭った別離。彼女が来てから、三人はずっとそうだったのだが。二人の絆に、余所者が楔のように入り込んでいた形態。故に絶縁としては極めて理想的とも言える別離だった。

「あの星にはもう、行きたくないわ」
彼女は憂鬱な顔で言った。
居場所のなかった星。血縁上のつながりがあるだけの連中と不毛な日々を過ごしただけの星。
彼女には呪いのような場所だった。

会いたくもない。あの血縁上のアレと、スージーには。顔も見たくない。
まあ、いいだろう。上も私の身の上は知っているし、メタナイトと直接関われという任務でもないのだ。
メタナイトとのパイプ役としては全く役立たないことも込みで寄越すんだろう。

「さっさと終わらせて、さっさと帰りましょう!いまの私たちならすぐに終わる案件よ」
「メア、君の故郷だろう?」
「私の故郷はメックアイよ」
「初めから、ね」
ただの討伐任務。度々危機に見舞われるポップスター側への加勢。無論実質ハルバード王国の下部組織のメタナイト軍団に恩を売ると言う意図も多少はあるだろう。
しかし今の彼女にはメタナイト軍団が威勢のいいだけの役立たずであろうが彼が生きようが死のうが、知ったことではない。
単なる、早く終わって欲しいだけの憂鬱な任務だった。

結果的に、彼女はメタナイトと、よそよそしく共闘する羽目になった。
「「兄上」。ほんとにわたしたちは、腐れ縁ですね」と彼女は自嘲した。
「事が済んだらなるべく早く、この星から出ていってくれ」と彼は言った。
「勿論。」
「あなたがたがここまで約立たずでなければ、ハルバード本国も加勢を送ったりしませんでした。私はここの家で育った過去が恥ずかしいです。できることなら、消し去りたい。」
唯一繋がった「血縁」をも否定するかのように、彼女は悪態をついた。
「ああ。私もだ。お前と同じ血が流れているのが恥ずかしいよ。」
「なら死んでおしまいなさい。」
彼女は剣をふるい、彼女の身の丈の10倍はあろうかという巨大な鉄球を弾き飛ばした。
後ろにいる「血縁上の兄」を殴ってやったかのようで、少し爽快な気分になった。
そして、この人物とは生涯分かり合うことは無いという確信が確固たるものとして胸を占めた。
この人は「単なる血縁者」なだけ。
家族ではない。家族ではなかった。初めから。